田母神俊雄氏(65、福島)がブラジル日本会議(徳力啓三理事長)の招聘事業に応じて先月24日に初来伯、25日に講演会「新しい日本を創るには」を行った。同氏は2008年まで航空幕僚長として勤務。在職中、民間の懸賞論文へ応募した「日本は侵略国家であったのか」と題する論文が波紋を呼び退職した。今年1月には東京都知事選に立候補。16人中4位と落選したが、20~30代の男女を中心に61万865票を集めている。
午後2時、会場となった愛知県人会館には雨天にもかかわらず、450人もの聴衆が詰め掛け、田母神氏の登場を待った。講演に先立ち小森広名誉会長が挨拶を行い、サンパウロ州議会からの感謝状を授与するため羽藤ジョージ議員と共に田母神氏が壇上に上がると参加者は大きな拍手で両氏を迎えた。会場には佐野浩明サンパウロ州首席領事、本橋幹久県連会長らの姿もあった。
田母神氏は、日伯両国旗へ一礼した後「どうも、危険人物の田母神です」とお決まりの挨拶で講演を始めた。「『日本の国は良い国だ』という論文を書いたのですが、当時の麻生総理大臣と浜田防衛大臣から『日本の国が良い国だとは何事だ。政府見解では碌な国ではないとなっているのがわからないのか』ということで職務を追われました」と自身の論文問題を皮肉交じりに披露。
更に「『日本を悪く言う言論の自由』というものは無限にあるんですよね、しかし、日本を褒めると途端にマスコミが騒ぎ、国会が紛糾する」と日本の歴史認識における〝異常性〟を指摘した。
そして「戦争に負けた日本は戦勝国アメリカの歴史観を強制された」「我々日本国民が考える誇りある歴史を取り戻さなければ、国家はやがて衰退をする」と自虐史観と言われる戦後の歴史教育からの脱却の必要性を説いた。
その後、国際政治の本質は「富と資源のぶん取り合戦」であるとし、第二次世界大戦以降、その方法が軍隊同士の衝突から「収集、宣伝、謀略、防諜」を要とした情報戦争になっていると話した。北朝鮮の「ミサイル問題」、中韓の主張する「南京大虐殺」「慰安婦問題」も情報戦争のためのものであり、日本政府は対抗姿勢をとる必要性があるとした。
また自衛隊の主要武器の国産化を訴え、武器の相互輸出入が関係国の依存性を強め戦争が起き難くすると主張した。自衛隊の装備はアメリカからの継続的な技術支援が無ければ戦力を発揮することが出来ず、真に国家の独立を図るならば軍備の国産化が必須であるとした。
現在の安部政権に対しては高評価する一方で「安倍政権には右派野党が必要。2年後の国政選挙には立候補する」と宣言すると会場からは歓声が起こった。
講演は1時間に及んだが、「言いたいことは全く言えませんでした」と話し足りない様子を見せ、大きな拍手が送られるなか国旗へ一礼し退場した。
最前列で講演を聴いた山本茂さん(87、静岡)は「素晴らしい。僕が言ってほしいことを全て言ってくれた。今のままの日本ではどうにもならない」と興奮気味に感想を話した。
講演を終え帰国した31日、田母神氏はツイッターで「ブラジルから帰ってまいりました。移住した日系人の皆さんの祖国日本を思う気持に感動しました。私も残りの人生を国政にかける覚悟を決めました」と述べ、「日本真正保守党」の立ち上げを宣言した。日系移民の思いが最後の一押しとなったようだ。