【レシフェ発=酒井大二郎記者】「必勝」の鉢巻きを身に着け、声を枯らして「ニッポン!」と声援を送る。そんな姿のブラジル人がペルナンブコ州都レシフェのスタジアムに溢れた。W杯3日目の14日、初戦を迎えた日本代表はコートジボワールと対戦した。1対2で逆転負けを喫したものの、会場には親日的なブラジル人が多く見られ、さながら「準ホーム」のような雰囲気に。対日感情の良好さを改めて印象付ける試合となった。
レシフェ市街からシャトルバスで山道を通り抜けながら一時間弱、山間に位置し、交通の便が悪いアレーナ・ペルナンブコスタジアムに、4万人以上の観客が来場した。同地在住の弁護士ロドリゴ・マヤさん(36)は「レシフェにはそんなにたくさん日本人、日系人はいないが、日本食を中心にしっかりとその文化は受け入れられている。皆日本、日本人をよく思っている」と話す通り、会場は中立地とは思えない日本寄りの雰囲気に包まれた。
開門を控えたゲート前では、キックオフ3時間前にも関わらず、日本人サポーターたちが持参し配布した「必勝」「日本」といった文字が書かれた鉢巻きを身に着けた多くのブラジル人らによる「ニッポン」コールがあちらこちらで沸き起こっていた。
声援は開門し、手荷物検査のための長い行列ができたあとまで続いた。日本代表のシャツを着て歓声の輪に加わっていたフェリペ・ゴメスさん(27、レシフェ在住)は「同じ会場で行われた(昨年6月の)コンフェデ杯のイタリア戦での活躍が、僕たちの心をつかんだ。単純に彼らのサッカーが好き」と、その熱狂の理由の一端について話した。
試合開始が迫り、両チームの先発メンバーが発表されると、日本人選手の名前が読み上げられるごとに会場全体から歓声が沸き、その声量はコートジボワールのそれを大きく上回っていた。キックオフとともに、日本チーム側のゴール裏席はサポーターが用意した水色のごみ袋を膨らました応援グッズで青く染まり、日伯両人一緒になって、大きな声援が送られた。
試合後、多くの日本人サポーターたちは落胆しながらも、ブラジル人の親日的な様子に驚きを見せていた。「タイムアップの後、多くのブラジル人に話しかけられて、『まだ大丈夫』と慰められた」という高岡朋子さん(たかおかともこ、30、埼玉)は、「日本を応援するブラジル人がこんなにたくさんいるのか、とびっくりした。本当に勇気づけられたし、ありがたい」と感心した様子で話していた。
3万枚配った日の丸手袋=「一目で日本だと分かる」
レシフェでの日本代表戦当日、シャトルバス乗り場のある近隣ショッピング・センター、最寄メトロ駅、空港などで、地元日本人会の有志が作製した「日の丸手袋」が配布された。主導したのは、レシフェ日本人会内に特設された「W杯日本代表応援委員会」(ヴァルテル・クワエ委員長)。日本サッカー協会(JFA)の依頼も受け計5万枚を作製し、レシフェ会場では3万枚が使用された。
受け取った日本人サポーターやブラジル人らが好反応を示していたほか、オーストラリア人のルディ・チャルストウスキさん(26)が「一目みて『日本』とわかる。素晴らしい取り組みだと思う」と話すなど、来場した外国人らも気に入った様子を見せていた。
委員会のメンバーで、自身もショッピング・センターでの配布活動に参加した長井忠雄(ながいただお)・前日本人会会長は「これだけの日本人がレシフェに集まることはあまりない。日本人会の存在を知ってもらう良い機会になったのでは」と話した。第二、第三戦の会場でも1万枚ずつが配布される。