【リオデジャネイロ共同】サッカー・ワールドカップ(W杯)開催中のブラジルで、日本人観戦客の犯罪被害が相次いでいる。人混みでのすり被害や置引が多いが、好奇心で「ファベーラ」と呼ばれるスラム街に入って銃を突きつけられた若者も。
外務省は16日時点で、日本代表の初戦が行われた北東部レシフェで少なくとも3件、最大都市サンパウロで4件を把握。「所持品は手放さず、ファベーラには近づかないでほしい」と注意を呼び掛けている。
「金をよこせ」。目の前に銃を構えた男5人組が近づいてくる。W杯開幕戦前日の11日、治安が特に悪いことで知られる東部サルバドル。観戦に訪れた北九州市出身の板井武志さん(34)は好奇心でファベーラに入り、タクシーの中から、街角で銃を持っていた男にカメラを向けてしまった。
タクシーが急発進し、事なきを得たが「もう二度とファベーラには入らない。まさか銃を突きつけられるとは」と顔をしかめて振り返った。これまで50カ国以上を訪れ、旅慣れているが「ブラジルは空気が本当に怖い」と指摘する。
外務省によると、W杯観戦にブラジルを訪れた日本人は5千人以上。物価が比較的高く国土が広いブラジルではバスで移動し安宿を渡り歩く若者も多い。観戦チケットを入手できずに無料のパブリックビューイングで観戦中に、財布をすられた例のほか、腕時計を引きちぎられたり、リュックサックを開けられスマートフォンを盗まれたりしたケースも。
サンパウロでは、観戦チケットや多額の現金を盗まれる被害が続いている。パスポートを失わなければ警察や在外公館に届け出ない人が大半で、外務省でも被害を把握しきれていないのが実情だ。