「エイ、ジウマ、ヴァイ・トマ・ノ・クー!」(ジウマ、オカマほられろ!)。ありえない最低の罵声が大統領に浴びせられた。しかも、7年越しに準備をしてきたW杯開幕戦会場で、他国大統領や来賓と一緒の時に、6万人の観客(国民)から大合唱された▼暴力的な抗議行動より、ある意味、もっと過激だ。一国の大統領にとってこれほどの恥辱があるだろうか…。テレビ局は編集して分からないように放送したが、ネットにはその現場映像が上げられている▼14日付エスタード紙によれば、大統領は翌日「軍事政権の拷問というもっと酷い迫害に耐えた。言葉による暴力にもビクともしない」と演説した。ルーラ前大統領は「エリート階級による憎悪」だと指摘したと同紙にある▼160~990レアルもする開幕戦チケットが買えるのは、まさに中流階級以上だ。昨年6月に10万人規模で大挙して街頭に出て、「サッカーより教育や医療に投資を」とデモで訴えた社会階層そのものだ▼PT政権は貧困層ばかり厚遇して、中流階級以上は税金を払わされるばかり。そんな不平等感が中流階級以上にこの10年余りの間に積もり積もっていた。その階級が試合会場の大半を占めたからこそ、ジウマ大統領を目の前にした時、大合唱で罵声を浴びせかけた▼高いチケットを買うぐらいだからブラジル代表は応援しているに違いない。「サッカーは好きだが今の政治は嫌い」という複雑な想いがあるから、国歌を会場全体で盛大に歌い上げた直後に、大統領への罵倒の〃合唱〃に入れ替わった。あまりに激しい感情表現をする国民性に愕然とする。大統領は決勝戦も観戦予定だが…。(深)