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W杯で感じた独特の空気

 ブラジルで迎える初めてのW杯。
「ブラジル戦の日は、町がゴーストタウンの様になる!」
「全てがストップする!」
「大渋滞になる!」
「いやいや、町から車が消える!」
 これまで周りのブラジル人から、都市伝説のごとくW杯を迎えたサンパウロがどうなるのか耳にして来ました。オーバーな話かと思いきや、いざ開幕してみると、あながち大げさでもないことに驚きました。
 6月12日。あの日のことは、ブラジルで過ごした思い出の中でも忘れられないものになることでしょう。
 開幕前夜。私は、サンパウロ市内にある「Octavio Café」内に翌日オープンする「nakata.net.cafe」のレセプションに出席するため外出。カフェ内の賑わいとは裏腹に、町の不気味な程の静けさに緊張感を覚えました。まさに嵐の前の静けさ。
 そして当日。この日の朝も町は静かなまま。W杯対応で祝日となったことにより、殆どの学校や企業が休みだったために朝の通勤ラッシュが無かったせいか静まり返っているのです。朝からすでにユニフォームを着て歩いている人がちらほら。異様な静けさの中には、ピンと張りつめる様な緊張感と、開幕を控えた高揚感も入り交じり、ぞくぞくしました。そして午後になり、一気にお祭りの様相を呈して来ます。
 各地で開催されているパブリックビューイング会場は歌やダンスで盛り上がり、バーにも人が溢れ、街中には黄色と緑のユニフォーム姿の人々が行き交います。日本人であり、またブラジル人でもある息子もブラジルセレソン(代表)の応援準備万端!

息子もブラジル代表のユニフォームを着て応援

息子もブラジル代表のユニフォームを着て応援

 そして試合が始まると、街中がまるでひとつの部屋にでもいるかのように、同じ空気を共有しているのを感じました。ブラジルがゴールを決めるごとに、花火、爆竹、歓声の嵐! ああ、これぞブラジル!
 W杯はまだ始まったばかり。熱戦の数々とともに肌で感じるブラジルの空気が決勝へ向けてどう変化していくのかも楽しみです。

プロフィール

竹内 香苗(たけうち かなえ)。愛知県出身のフリーアナウンサー。約10年間過ごしたTBSでは『はなまるマーケット』『朝ズバッ!』などに出演。夫のブラジル赴任に伴い12年に同局を退社し、ホリプロに所属。同年11月よりサンパウロ市に滞在している。