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パッセ 3=「ウッチー 走り抜け」

 初めて立ったW杯のピッチからは、どんな景色が見えたのだろう。コートジボワール戦後、内田篤人選手(清水東高出)に聞いた。「11人対11人でボールは1つ。いつもと変わらなかった」。ドイツでの4年間があるから、今さら世界のレベルに驚くことはなかった。「自分は、こうした試合を日常の中でやれているんだなって」。特別な感情を抱かなかったことが、少しうれしそうだった。
 大会前、内田選手の母澄江さんからこんな話を聞いた。4年前、南アフリカの空港でのこと。帰国する自分を遠藤保仁選手の母ヤス子さんがぎゅっと抱きしめ、こう言ってくれたという。「篤人君を信じなさい。4年後も必ず篤人君が連れてきてくれるから」。遠藤選手も、8年前のドイツ大会はメンバーに選ばれながら1秒もピッチに立てなかった。
 先日の初戦。澄江さんはスタンドにいた。負傷から復帰した息子が代表に入っただけで十分だと思っていたのに、夢のピッチを駆けた。試合前から「涙がこぼれてきた」という。
 苦境に立つ日本の中で、調子の良さが目立つ内田選手に掛かる期待は大きい。多くの人の思いを背負った26歳は倒れるまで走り抜くと思う。(ブラジル・イトゥ=静岡新聞特派員・南部明宏)