W杯開幕後、ブラジル最大のテレビ局TVGloboでは、中継に次ぐ中継。ニュースや情報番組でも日々注目の試合や、ブラジル代表の様子を伝えています。そして街中にある売店には、W杯についての一面記事が踊る新聞や雑誌が並び、その日の対戦国によって町の雰囲気が少しずつ違う気がします。
もちろんブラジル戦の日は、試合中は町がガラガラ。試合開始とブラジル得点時には、歓声、爆竹、花火、クラクションの嵐です。
これまでと違い、ブラジルに住んでいる今、私は日本とブラジル両方を応援しているので、大忙しです。日本のユニフォームを着たり、ブラジルのユニフォームを着たり。ブラジル戦の日は、試合開始に向けて、渋滞や混雑の時間帯を加味しながら、一日のスケジュールを組み立てます。サッカーの試合に向けて一日を過ごす様になるなんて、私にとってはブラジルにいるからこそ。少しずつブラジルに染まりつつあるかもしれません。
ご存知ブラジルには多くの日系人がいます。周りにいる日系ブラジル人の友人にブラジルと日本どちらを応援しているか聞くと、たいてい「両方!」という答えが返って来ます。2世や3世の方で、日本に行ったことが無かったり、ポルトガル語のみを話す方も、ほとんどが両方を応援しています。日本を大切に思う気持ちが先代から脈々と受け継がれていることの象徴の様です。日本とブラジルが対戦した場合どちらを応援するか伺うと、「ブラジル!」なのだそうです。
日本はブラジル時間24日のコロンビア戦に破れ、1次リーグ敗退となってしまいました。悔しい限りですが、ブラジルで迎えた今回のW杯カップでは多くのブラジル人、日系人、日本人による熱い応援を目にしました。
地球の反対側という距離をものともせず、むしろその距離が更なる応援の熱を生んだ様に感じました。ニッポン代表のブラジル到着、キャンプ地入り、ソロカバでの公開練習、日本人学校のこどもたちとの交流。そして、レシフェ、ナタール、クイアバでの試合。ブラジルで暮らす日本人にたくさんの思い出をくれました。
ブラジルでは、敗退することを「ir embora」「(国に)帰る」と表現します。なんとも厳しい表現だとも思いましたが、ブラジルでの闘いを終え日本に帰る代表そしてサポーターの皆さんに感謝の気持ちを込めて拍手を贈ります。
プロフィール
竹内 香苗(たけうち かなえ)。愛知県出身のフリーアナウンサー。約10年間過ごしたTBSでは『はなまるマーケット』『朝ズバッ!』などに出演。夫のブラジル赴任に伴い12年に同局を退社し、ホリプロに所属。同年11月よりサンパウロ市に滞在している。