ブラジル地理統計院(IBGE)による工業統計が発表され、5月の工業生産が前月比で0・6%下がり、3カ月連続で下降していたことが2日、明らかとなった。また、1~5月の工業生産は昨年同期と比べ、自動車の12・5%減を筆頭に大きく落ち込み、工業界の不振が深刻化をきわめている。3日付伯字紙が報じている。
前月比での工業生産は3月が0・5%、4月も0・5%、そして5月が0・6%と3カ月連続で減少した。さらにこれを前年同月比で見ると、3月が0・7%、4月が5・8%、5月が3・2%の落ち込みとなる。
特に自動車の生産減は深刻だ。こちらは前月比で3・9%減、前年同月比に至っては20・1%と大幅に落ち込んだ。
1~5月までの統計で見ても、工業生産の落ち込みは顕著だ。昨年同期との比較では、自動車f12・5%、鉄鋼が8・8%、化学製品が6・4%、金属が3・7%と、従来にない減少を示している。
また、工業部門の投資のバロメーターでもある「資本財」に関しても、前月比で2・6%、1~5月の累計でも前年同期比で5・8%減っている。また、建築用の砂やセメントなどの原材料の消費も、この5カ月間に前年同期比で3・9%減少している。
これらのことから、国内総生産(GDP)の引き続いての不振も免れ得ない状況になっている。第2四半期のGDPの予想はかねてからマイナス0・22%~プラス0・50%と低調なものだったが、今回のこの発表を受け、さらに下方修正されることが予想されている。
6月はW杯がはじまったために、消費が食品やサービス業に集中。商店の営業日が減少したことも影響し、工業製品ではテレビがよく売れたものの、テレビの販売も主に第1四半期に行なわれたのか、第2四半期の伸びは予想を下回った。
こうした工業の不振をエコノミストたちは、工業製品税(IPI)の減税対策がもはや国民の工業製品の消費活性化につながっていないこと、そして、特にブラジルの自動車産業にとっての最大の得意先であるアルゼンチンがデフォルトさえ危ぶまれている経済危機に陥り、同国への輸出量が伸び悩んでいることがあげられる。
特に、先日決まったばかりのIPIの延長に疑問を抱く人は少なくない。ただでさえ消費の活性化につながっていないのに、税率を抑えたことで国が本来得られるはずだった税収も逃すこととなり、二重の意味で悪循環となることにエコノミストたちは警鐘を鳴らしている。
また、この工業の不振により、工業部門、特に自動車部門での解雇も心配の種となっている。5月の雇用が同月では過去22年で最低のものとなっていたことは以前も報じたが、その原因を作った工業部門では、失業者が雇用者を2万8500人上回り、雇用創出全体の足を引っ張った。