昨年2月、経費削減により「駐在官事務所」に格下げが決まった在ベレン総領事館。日系社会を中心とした地元住民の猛烈な反発により、「領事館」への格下げに留めるとされたはずが、フタを開けて見ると、実は「領事事務所」という見慣れない名が冠されていた―。
在ベレン総領事館を駐在官事務所に格下げする日本政府の決定を覆す要請をするため、昨年5月28日に山田フェルナンド(パラー日系商工会議所会頭)、生田勇治(汎アマゾニア日伯協会会長)の両氏が訪日し、麻生太郎副総理(日ブラジル会議員連盟会長)に直訴、その場で「領事館」にするとの約束をえた。つまり、〃麻生裁き〃だ。
ところが数週間前、本紙通信員の下小薗昭仁さんから送られてきた地元ニュースには「ベレン領事事務所」と記載されていた。実際に外務省サイトで確認すると、ポ語名は「Consulado(=領事館)」なのに、なぜか日本語名は「領事事務所」となっている。ポ語と日本語名が不一致というチグハグな状況が起きている。
下小薗さんは「なぜ格下げされ、なぜこういう名になったのかも、公式な説明は何もない。領事事務所は『我々にはどうしようもない』と言うだけで、まるで騙されたよう」と明かす。
アマゾナス州都マナウスの総領事館は保持された傍ら、ベレンだけ強引に「事務所」に引き下げられた状況に対し、現地一世の憤りは深い。ただし、「二世はポ語名がConsuladoなので納得しているようだ」との声もある。
同領事事務所に直接問い合わせたところ、「法律上『領事館』というカテゴリーがない。『名称をどう扱うか』という議論の末、特別にこういう扱いをすることになった」と返答した。
こうした弁明に対し、昨年熱心に反対運動を行ったパラー日系商工会議所の山中正二副会頭は、「実質、事務所になったことに変わりない。はっきり説明せず、お茶を濁しているだけだ」と静かに憤る。
パラー州には9月に85周年を迎えるトメアスー移住地があるだけでなく、カラジャス鉄鉱石鉱山、建設中の水力発電所など豊富な資源も有している。山中さんはその歴史的価値・経済的重要性を度々訴え、「何のために今まで我々がせっせと農業開発してきたのか。国策を信じ、移民はマラリアで相当な犠牲も払った。それを全て無視された。日本政府はこれが両国の国益を損なうということをきちんと認識していない」と政府の決断を厳しく咎めた。
日本語名称が「領事事務所」になったという公式発表がなかったため、その事実自体があまり知られていないようだ。山中さんは「まだ諦めていない。領事事務所にもっと真剣に考えて頂きたい」と運動を続ける意向を示している。