日本でも人気の男性アカペラボーカルグループ『INSPi』が来伯し、日本祭り期間中の5、6日に国際交流基金主催でワークショップ、中央舞台で公演を行った。ワークショップ用に特設された舞台にINSPiメンバーが現れると大きな歓声が響いた。挨拶代わりに美空ひばりの『お祭りマンボ』を威勢良く歌いだすと、場内は一気に熱を帯びた。
アカペラとは無伴奏で合唱する形態の事。曲中に各メンバーが声で太鼓の音を模写すると、場内からはどよめきが起き、観客はみるみる惹きこまれていった。
昼はワークショップとして、研ぎ澄まされた和音を堪能するだけでなく、観客を舞台に上げてボイスパーカッション(楽器の音を声帯模写すること)を聞かせた。『みかんの花』を歌いながらの手遊び、皆で『七夕さま』を歌うなど家族的なひと時を演出した。
最後には同じ事務所の先輩で、去年の日本祭りで凱旋公演をしたマルシアが一部ポ語訳した曲『ココロの根っこ』を歌い、観客の笑顔と拍手に包まれて盛況のまま終わった。メンバーの奥村伸二さんは「先輩のマルシアさんもブラジル出身だし、とても親しみがあった。遠い国だが最初から身近に感じていた」と思い入れを語った。
INSPiは日本全都道府県や各県の小学校、そして世界7カ国で公演の経験があり、持ち歌も各国版があるなど海外公演に対して積極的に取り組んでいる。メンバーの北剛彦さんはその理由を「歌は歌い継がれないと消えていく。日本語を大切にしたいし、後世にも伝えていきたい。外国の人は言葉こそ違うが人間としての根っこは一緒だと分かるので、海外公演は大切な機会。遠い国に来て生活している人と出会い、素敵だなと言える感性を受け取る事で、異文化交流をしているのだと思う」と答える。
ブラジル公演では「日本を身近に感じて欲しくて、昔から歌い継がれている曲を選んだ。一緒に口ずさんでくれて嬉しかった。苦労をされた方が大勢ここで頑張っているのだと思うと自分達も力が湧く」と語り、充分に手応えを感じた様だった。
夜の部は中央舞台で公演が行われ、INSPiが熱のこもった美しい和音を次々に響かせ、最後にMPBの名曲『トリステーザ』を歌い上げた直後、客席からアンコールの声がとどろいた。再登壇すると坂本九の『上を向いて歩こう』を歌い出し、一緒に立って歌ったり踊りだす観客もいて、熱気が最高潮に盛り上がったまま幕を閉じた。
公演後、大倉智之さんは「アンコールが来るとは思っていなかったので、とても嬉しかった。凄く盛り上っていてパワーが凄かった」と興奮冷めやらぬ様子。「自分達の伝えたい事を受け取ってもらえた様で感動した、また公演できたら嬉しい」と満足そうに語った。