全伯太鼓大会＝ブラジリア「光太鼓」涙のＶ＝太鼓の音色に心弾ませ＝１６００人が演目に熱狂

　ブラジル太鼓協会（島田オルランド会長）主催の『第１１回ブラジル太鼓選手権大会（XI Festival Brasileiro de Taiko）』が６日、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市のイベント会場ＣＥＮＦＯＲＰＥであった。日本行きを争うジュニアの部では、ブラジリアから参戦した「光太鼓」が涙の初優勝。来年３月に長野県長野市で行われる「第１７回日本太鼓ジュニアコンクール」への出場権を得た。その他２８団体約４００人による魂の演目に、１６００人を超える来場者が心打たれた。

　飯星ワルテル連邦下議、西本エリオ、羽藤ジョージサンパウロ州議、サンベルナルド・ド・カンポ市のルイス・マリーニョ市長らが訪れた開会式で、島田会長は「開催にご尽力いただいた方々に心より感謝。昨年優勝し、日本で演目を披露したコロニア・ピニャール『飛翔太鼓』を超える演目を」と期待した。
　「生きる太鼓」をテーマにジュニアの部が行なわれ、１９団体が日本行きの切符を争った。その舞台袖には各チーム充実の表情が。光嵐太鼓（スザノ）のフジムラ・パウロくん（１５、三世）は、「おばあちゃんの勧めで始めた太鼓。今日はチームみんなで情熱をもって演じられた」と満足そう。指導者の玉元カミラさん（２５、三世）も、「文句なしの完璧な出来。練習の成果を存分に出せた」と喜んだ。
　清流太鼓（サンミゲル・アルカンジョ）の岩崎利光さん（１６、三世）は、「実は自信が少ししかなかった。本番の怖さも感じていた。でも練習したことを信じて乗り切った」と振り返った。


大会総括＝元ＪＩＣＡシニアボランティア太鼓指導員の特別審査員　箕輪敏泰

今大会は来場者の観戦する姿勢もですが、アシスタントの迅速な運営、特に１分を切るほどの舞台転換の速さは大変に素晴らしいものでした。
　競技の方では、実力が拮抗した審査員泣かせの内容でした。ジュニア優勝チームは日本へ行きますが、前回の５位という好結果は高い壁、重圧になるかもしれません。それを乗り越え、さらに高い順位を期待します。
　今回、衣装の乱れ、バチのすれる音が気になりました。規定時間の過不足もありました。決して許されることではありません。時間厳守を意識して今後の練習に励んでください。
　良い点もありました。与えられた課題にそれぞれ工夫が見られ、新規参戦したチームの実力も高く確かな成果を披露していました。いずれにしてもこれまでの大会で最もハイレベルなものであり、私も今後の指導にさらなる熱を入れていきたいと決意する所存です。


幼年、ベテラン年代別や＝前回優勝者の特別演目も

　年齢制限のないリブレの部に出場した源流太鼓（カッポン・ボニート）の久野沙織さん（１８、三世）は、「進学で団員がバラバラに。地元に集まって月１回の練習だけど本番は集中できた」。「日本語学校に在籍していた１３歳の頃から始めた。今ではサンバよりも日本文化大好き。みんなと太鼓をたたいているときは最高の気分になる」と言えば、竜鳴太鼓（アラサツーバ）の山先ナタリアさん（２０、四世）も「太鼓の音色が心を動かす。大満足の出来だった」と喜んだ。
　一心太鼓（ロンドリーナ）は、リーブリの部前年優勝者として特別演奏を披露。非日系フェリペ・ラモス・ダ・シルバさん（２２）は、「みんなで叩いているときに、熱く感情的になる。そんな気分が爽快でやめられないね」と太鼓の醍醐味を表現し、舞台では王者の貫禄を見せつけた。
　会場内には『ガイジン２』に出演した小野あやさん（８６、山形）の姿も。ロンドリーナから訪れた彼女の孫は、一心太鼓に所属する。「元気よく勇ましい姿で太鼓を演奏してくれた。孫の雄姿に感動。広いステージも演者がのびのびできて良かった」と、屈託のない笑顔を見せた。

昨年の雪辱晴らし優勝＝感動のあまり号泣も

　審査の末、ジュニアの部優勝は光太鼓に決定。昨年の準優勝チームが悲願の初優勝をさらった。号泣していたソノダ・セイジさん（１７、三世）は、「目標に向かってひたすら走り、決してあきらめなかった。これ以上の幸せはない」と人目もはばからず泣き崩れた。
　大会実行委員長の泊エリーザ事務局長は、「昨年のサンパウロ市文協大講堂（１２００人収容）は座る席もなく盛況だった。参加チーム数も増え、今年はさらに規模拡大できうれしい。これからも太鼓を愛する子どもたちに、輝く舞台を与えるのが私たちの使命」と表情を引き締めた。

　成績は順に以下のとおり（敬称略）。【ミリン（１２歳未満）】前進太鼓（パラナ州カスカベル）、光嵐太鼓、瑞穂和太鼓（サンベルナルド・ド・カンポ）、清心太鼓（ドラセーナ）、若葉太鼓（パラナ州クリチバ）　【ジュニア（１２～１７歳）】光太鼓（ブラジリア）、源流太鼓（カッポン・ボニート）、初美太鼓（サンジョゼ・ド・リオ・プレット）、光嵐太鼓、若葉太鼓　【マスター（４０歳以上）】光嵐太鼓、瑞穂和太鼓　【リーブリ（年齢無制限）】団体フェニックス（プレシデンテ・プルデンテ）、一心太鼓、源流太鼓、龍舞太鼓（イビウナ）、轟太鼓（オザスコ）　【大太鼓】ギリェルメ・デ・オリヴェイラ・トミシマ（団体フェニックス）【特別賞】シンチア・アリッサ・オカダ（光太鼓）