「禁断の味の魚を食べさせる店がある」という噂を聞いた読者から、「確かめてほしい」との通報を受けた。しかも「店主は日本人だが日本食ではない」らしい。いったいどんな〃禁断の味〃が待ち受けているのか。さっそく忍者ぐるめ隊出動だ!!
メトロのアナ・ローザ駅から坂を下って徒歩10分、公園わきにその店はあった。店の内装はまったく日本らしくないが、一隊員がさっそくトイレに潜入後、「なぜか通路に日本移民80周年や舞踏の大野一雄ブラジル公演のポスターがある」と驚くような報告をした。一体何者だ…。
メニューを開くと「ピラニア・スープ」(16・50レアル)やら、「ピラニアの姿揚げ」(100グラム当たり7・5レアル、通常は1匹400グラム前後)が。「や、やばい!」珍魚喰いの日本人には堪えられない一品、ピッピッピッピッピッ――――と忍者警報が全開だ!
思わずスープを注文すると、香味野菜とじっくり煮込んだもので、ピラニアの身も小さなツブツブとなって混ざっている。小骨が多く身が少ない魚で、食べるのは大変だが、パンタナール地方では「スープが精力剤がわり」と聞く。すすると思いのほかコクのある味で、浜松名産「夜のおやつ・うなぎパイ」より精力が〃突き〃そうだ。
ピラニアの姿揚げに未練を残しつつ、密告があった噂の一品「Pintadono Espeto(ピンタードの串焼き)」(72レアル)を注文する。出てきた姿をみて「こ、これは魚のシュラスコだ」と唸る。ピンタードといえば「ブラジルの川魚の王様」じゃないか。それが炭火でじっくり焼かれている。一同顔を見合わせ、ごくり、とつばを呑む。
まず毒味役が一口いただく。「脂ののり方が尋常じゃない…、この味はまるで肉。もしやニセモノか!」。隊員一同、瞬時に内ポケットに潜ませた手裏剣に手が伸びる。だが「やはり魚だ」との結論に達し、一斉にむさぼりつく。
店員に店主名をこっそり聞くと、戦後移民の坂口功治さん(福岡)とのこと。80~90年代にポ語俳諧雑誌『Portal』をやっていた有名人だ。道理であんなポスターが貼ってある訳だと納得。
途中から「脂乗り過ぎかも…。今晩胃がもたれそう」との弱気の牽制論も強まるが、「美味いからOK~!」と結局は完食! なお、店名の元にもなっている一押し料理は「トライーラ(雷魚)のから揚げ」(小サイズは50レアル前後から)で、家族全員でつつける量だ。
〃禁断の味〃は本当だった。さっぱりした寿司や刺身の対極にあるのが、この川魚専門店?!
◆ Rancho da TRAIRA
【営業時間】(昼食)月~金=正午~午後3時、土=正午~午後4時、日・祝日=正午~午後5時、(夕食)火~木=午後6時~11時、金~土=午後7時から深夜0時
【住所】Rua Machado de Assis, 556 –SP
【電話】 (11) 5571-3051
【サイト】www.ranchodatraira.com.br