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川目弁護士の法律アドバイス=日本ではここに気をつけて!=想像絶する死刑執行の恐怖

弁護士法人川目法律事務所代表 川目武彦(かわめ・たけひこ)

 1978年生まれ、埼玉県川越市出身。埼玉県立川越高校卒、上智大学法学部法律学科卒。2004年に司法試験に合格し、09年に弁護士法人川目法律事務所(浦和)を設立。その後、東京都、千葉県にも事務所を設立。13年に開設した群馬の事務所にはポ語通訳を置き、在日ブラジル人にも対応。珍しい取り組みと反響を呼んでいる。

 クイズです。中国は不明、イランは314、イラクは129、アメリカは43、日本は8――これらは何の数でしょうか。答えは2012年の死刑制度を実施している国の「死刑執行件数」です。
 日本では、現在も死刑制度が維持されており、裁判員裁判が導入された以降も、死刑判決が出ています。最近も新たに死刑が執行され、谷垣法務大臣が会見を行ったところです(2014年6月26日川崎正則死刑囚)。
 日本国内では、死刑制度の賛否に関して、賛成派と反対派の激しい議論がありますが、いまのところ、すぐに死刑制度が廃止されるという様子はうかがえません。多くの国が死刑制度を廃止、あるいは事実上停止しているのにもかかわらず、日本はこの制度を維持し、現在でも絞首刑による死刑執行を続けています。
 日本の死刑制度については、その制度の存在自体に議論があるところですが、これ以外に死刑確定者の処遇をめぐる問題もあります。例えば、現在の日本の死刑執行制度は、死刑執行の日時を予め死刑確定者に伝えない運用になっています。いつ執行するのか教えないわけです。これが非人間的ではないか、という議論があります。
 私は現在死刑確定者の方の再審請求事件の弁護人をしているので、定期的に死刑確定者の方から話を聞く機会があり、この「いつ死刑が執行されるか分からない」という恐怖について教えてもらいました。この恐怖は、外界で生活している我々には想像を超えるものであるようです。例えば、施設から出される食事がいつもよりもおいしかったりすると、「いつもと違う。今日が死刑執行の日ではないか」と思ったり、また、刑務官の足音が聞こえると「ひょっとしたら死刑執行のためではないか」という恐怖を常に感じるということでした。
 ちなみに、去年死刑を廃止した州のアメリカ人刑務官の人と話をする機会があったので、上記の日本の死刑制度の説明したところ、その刑務官の方は「そのようなことをしていたら気が狂ってしまうだろう。なんでそんなひどいことをしているんだ?」と強い疑問を呈していました。
 ブラジルでは既に相当前に一般犯罪に対する死刑制度が廃止されていますから、死刑確定者に関する上記のような問題が発生することはなかろうと思います。そのため、今回の話はブラジルに居住されている皆様には関係がない話なのですが、日本では、死刑問題に関する議論が続くなかで、今日も死刑制度の歯車が回り続けていることをお伝えしたく、このテーマを取り上げさせていただきました。