〃企業スポーツ〃という現状以外に、それらを取り巻く社会全体にも懸念事項があると語り、中でも「宗教の違い」を指摘する。W杯ではカトリック信仰国が好成績を収める傾向があると見ており、「カトリックの場合、日曜日は商業施設が休日となる。市民が集う場所としてスポーツクラブや公園を開放し、大きな受け皿として扱われた」ことがサッカー振興に関係するという。
ブラジル、イタリア、スペイン、ウルグアイなど「歴代優勝国の多くはカトリック」と言えなくもない。「仏教はカトリックほどスポーツを重要視しないのでは? 日本にとって日曜日は商業界が一番儲かる日でスポーツはしないよね」と指摘した。
宗教が生活の違いを生み出すことに間違いはなく、週末にスポーツをする習慣があまり定着しなかった「日本は文化的な〃ハンデ〃を背負っている」と越後さんは見ている。
「追いつくためには、そんな部分も計算しなければならない。特待生を集めた私立校がカトリックとすれば、サッカー後進国の日本は一般の公立校。両者が対戦したら大抵、私立が勝つよね。それが環境の差というもの」との比喩で、日本が世界で勝てない要因を説明した。
さらに、学校教育でプロ選手を育てようとする方向性も間違いだと指摘した。「学校はあくまで勉強する場。そもそも体育とプロスポーツは全く異なるもので、文部科学省主導の元では一生通用しない」。世界で対等に戦える水泳、体操、柔道といった種目を例に挙げ、「スイミングスクールや体操教室、道場など、どれも学校外で技術を伸ばしている競技が多い」と話す。
越後さんは「日本の学歴社会を変えることは今や不可能。でも勉強して良い大学出て、一流のスポーツ選手にもなるのは無理でしょう? 日本が世界の頂点を狙える大会はユニバーシアード(学生の世界大会)だけ。外国の学生よりスポーツをやっているから結構強いよ」と皮肉を込めて笑った。
日本サッカーが目指すのは〃学生の世界王者〃ではなく、W杯で勝利することだろう。であれば越後さんが語るように学校教育の枠を超えた、JFA独自の選手育成をさらに本格化させる時期がやってきたのかもしれない。
「でも問題提起するマスコミもおらず、世論も特に指摘しない」――。どうやら日本サッカー界の成長は、その枠を超えた社会的な意識改革が求められているらしい。(つづく、小倉祐貴記者)