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実体持ち始めたBRICS

 W杯決勝戦、ドイツ代表が1点を決めた瞬間、メルケル首相は飛び跳ねて喜び、ジウマ大統領は座ったままで驚きを表現したが、ロシアのプーチン大統領の顔はピクリとも動かなかった。宿敵ドイツが勝利した瞬間であり、次期W杯主催国として義務的に決勝戦に立ち会っているだけで、頭の中はBRICS会議のことで一杯だったのではないか▼2010年のBRICS5カ国の国内総生産は世界全体の18%、人口では計30億人と世界の半分近い大市場だ。今回BRICS開発銀行を発足させ、初代総裁国はインド、本部は中国に置くという具体的内容を決め、第6回会議(15日)にして〃実体〃を持ち始めた。ジウマ大統領は交渉決裂なら設立自体が今声明に入れられず、今会議も無成果では10月選挙に差支えがあると考え、初代総裁国の座をインドに譲ったようだ▼欧米とはウクライナ問題で対立するロシア、次期覇権国かと牽制されがちな中国からすれば、BRICSを軸に同盟関係を増やしたい。だから翌日、南米11カ国代表と会合を持ち、影響力を中南米に広げる方向性を明確に示した。W杯でアメリカ大陸勢が躍進し、親近感を高めた絶好のタイミングを活かした。従来の覇権は「ロシアと東欧」対「EU」のように地理的に集中する特徴があったが、BRICSは世界に遍在する新しい形の勢力圏を目指すようだ▼ロ中が先導する形で素早い〃パス回し〃が始まった。それに追いつこうとするかのように、2週間後に安倍首相がやってきて「第2のセラード開発」を思わせる大型農業支援を発表するようだ。ブラジルはしばらく国際舞台の主役級の一人で居続けそうだ。(深)