惨敗の中でも評価できる点はなかったのか――。越後さんは「興行的には成功したね」と皮肉たっぷりだ。「マスコミがアイドルを作り、実力もない者が人気者になった。商売繁盛でも強くはならないよね。合宿地と試合会場に気温差があろうが、食生活や環境に違いがあろうが、実力があれば乗り越えられた」と調整不足による惨敗説を一蹴した。
戦術に関しては、「どの競技も、弱者は守るのが基本。ない力を信じて攻めたのがこの結果」と攻撃偏重の陣形に疑問をぶつける。「スター気分のMF本田圭佑らが『優勝狙う』と公言したが、結局このザマ。マスコミは一切責任追求しないし、世間からも厳しい声が挙がらなかった。いまだに選手のコマーシャルが流れているなんて、ブラジルではあり得ないよ」と差異を挙げた。
そんな世間の甘さを露呈したのが、成田空港での温かい出迎えだと指摘する。敗戦にうつむく日本代表メンバーの帰国を待っていたのは、なんと約千人もの歓迎ファンだった。「あれは〃芸能人〃を見たくて集まっただけ。人気者を作るのが本当に上手いよね」と語る表情には、半ばあきらめも見られた。
「マスコミは月末清算のため、すぐ売り上げが伸びる話題を取り上げたくて仕方がない。売上重視で紙面を作る環境にジレンマもあるだろう」との理解も見せつつも、大事な大会の総括より、新監督の話題や次のアイドル作りに走ってしまう日本のメディアの体質に疑問を投げかけた。
日本のメディアがJFAを批判できない傾向に関し、「『協会から嫌われたらのけ者にされる』(協会から取材証を出してもらえない)と恐れ、全く批判できない。本来は逆。マスコミこそが恐れられる立場のはず」と両者の関係を危惧した。
その上、JFAの体質として「負けた責任がある役員は現職のまま。経営不振でも処分のない企業があるだろうか」との点にも言及した。
世間の風潮にもズバリと切り込んだ。「今話題の汚職議員(野々村竜太郎兵庫県議)は、批判すべき対象なのに人気者になってしまった。テレビ局が面白半分に扱い、視聴者も楽しんでいる。号泣会見は外国からバカにされているよ。そんな社会が『W杯で勝つためにこれからどうするか』『世界に近づくためにどうすべきか』なんて考えても、簡単には答えはでないよ」と吐きすてるように語った。
越後さんは「W杯で観戦者やマスコミが現地の外国文化に触れれば、様々な違いがあると気付くきっかけになり得る」と期待する。まずはサッカーが強い国との文化の違いに日本社会が気付き、それを社会の意識変革にまで広げ、最終的にスポーツ振興する―という道筋のようだ。その先にあるのが18年ロシアW杯だ。(終わり、小倉祐貴記者)