旅行先で美味しい店は、タクシーの運転手に聞くのが常道だ。会話自体も面白く、思いがけないことを知ったりもする。最近はネットが便利だが、天邪鬼のコラム子はいまだにそうしている。もう一つの余得は、あまりたいしたことはなくとも、「何故、この店を紹介したのだろう?」と逞しくさせた想像の調味料で味をごまかすこともできる▼リベルダーデもある意味、地元になってしまっている。自分がそうは思っていなくても、この地区を訪れる人にとってはそうだ。時折話しかけられ、「どこの寿司が美味しい?」と聞かれることがある。冗談で「日本に行った方がいいよ」と答えたりもするが、最近はポルキロの店を教えることにしている。ブラジル人にとっては中華もあるし、盛りだくさんで見た目にも満足するのではないか▼問題なのは外国人だ。アメリカやヨーロッパだと結構美味しい日本食を食べているのだろうから、変なところは教えられない。これも地元意識なのだろうか。ただ、予算を聞くと大概ポルキロに落ち着く。そもそもあまり寿司を食べないから、店を知らないのが実際なのだが▼最近、日本から来て数カ月の本紙研修生が同じ目に遭遇した。白人の五人組に英語で声を掛けられ店を聞かれた。ただ、警戒しているのか「すぐ近くで」という条件だったので目に入った知りもしない店を薦めたのはいいのだが、編集部に戻ってから「あの店でよかったのだろうか…」と悩んでいた。リベルダーデを知らないながらも、日本人特有の「おもてなし精神」ゆえか。彼らが「何故この店を…」と首をひねっているかどうかは知らないが。(剛)