【共同】安倍晋三首相が8月1日、ブラジルでジウマ大統領と会談する際に発表する海洋資源の開発促進に関する両首脳間の共同声明案が19日判明した。ブラジルの海底油田開発を後押しするため、日本の技術を導入した巨大洋上基地建設への取り組みを明記。ブラジルの造船産業の基盤強化に向け、国際協力機構(JICA)による人材育成事業を年内に開始するとした。ブラジルの経済成長に日本企業が貢献する仕組みをつくり、関係発展につなげる狙い。両首脳は経済交流拡大に全力で取り組む意向を表明する。
巨大洋上基地は「ロジスティックハブ」と呼ばれ、海底油田の掘削場所に人員や資材などを輸送するために設ける浮体式の中継施設。ヘリコプターの発着や高速船による接岸が可能で、日本政府筋によると、ブラジル沖への導入を検討している基地の規模は縦約300メートル、横約100メートルを想定している。総事業費は500億円以上。ブラジルの原油生産量は世界13位(2011年)。海底油田が大部分を占める。
声明案は、巨大洋上基地について「ブラジルでの海洋石油開発、生産に関する安全性担保と輸送コスト削減への貢献を期待する」と指摘。海洋資源開発に向けて民間、学術、行政の各レベルで両国間の協力を強化する重要性を強調した。
人材育成事業に関し「ブラジル造船産業の人材育成を量、質の両面で向上させる」と明記。「日本の実践的な造船の工程管理や建造方式を導入する」とした。日本政府関係者によると、ブラジルの現地造船所に日本の専門家を派遣し、造船のノウハウの指導を実施する予定。造船分野での両国間協力を「経済的な協力だけでなく、友好関係の強化にもつながる」と位置付けた。
ブラジルの海洋資源開発
南米を代表する新興国のブラジルは海底油田に恵まれており、エネルギー需要の増大を見越す同国政府は開発計画に力を入れている。原油生産量は日量215万バレル(2012年)、確認埋蔵量は153億バレル(同)。国営石油大手ペトロブラス社が大規模な深海油田開発を進める。探査、掘削能力は世界最高レベルとされる。ただ陸から遠く離れた油田への人員輸送の効率性に課題があり、日本が中継地点となる巨大洋上基地の売り込みを図っている。
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