樹海

 17日に起きたマレーシア航空のボーイング777機撃墜事件は、ウクライナ問題の根の深さを国際社会に改めて印象付けた▼BRICS首脳会議のために来伯したロシアのプーチン大統領は、ジウマ大統領との個別会談を行って孤立していない事を誇示しようとしたが、欧米諸国は同国への新たな制裁を発表。その矢先の航空機撃墜事件は298人もの犠牲者を生み、全員の遺体回収は20日までかかった▼パラナ州クリチバではウクライナ出身者や子孫らが19日に犠牲者を追悼、平和を祈る集会を開いた。ウクライナでの緊張が高まり現地にいる家族と連絡が取れないと案じる女性や駐伯大使らがインタビューに応じていたが、犠牲者の遺族や関係者は胸がつぶれる思いでいるはずだ▼マレーシア航空機が絡む事件は今年2回目で、両方の事件で家族を失った人達もいるという。エイズに関する学会に出席するためにオーストラリアに向かっていた約100人の研究者達も犠牲となり、学会でも追悼の時を持った。世界保健機構(WHO)専属の英国人ジャーナリストと同性愛婚をしたブラジル人男性は、今もその死が信じられないと語っている▼イスラエルではガザ地区で死んだパレスチナ人の数が20日の時点で430人を超えたが、空爆が始まった直後の新聞にはイスラエルに家族がいるというブラジル在住者のインタビュー記事が掲載されるなど、世界中で起きている事件や事故を自分の事とし、痛みを覚えている人は国内に大勢いる▼ニュースが流れるたびに息を呑み、涙を流していては仕事にならないと言われそうだが、多民族の国だからこそ聞こえてくる声に耳を傾けたい。(み)