先週末のバストス卵祭りで、鶏卵選別包装システムメーカー「ナベル」(本社=京都市)が唯一の日本企業として商品を売り込んでいた。税抜きで1億数千万円と高額だが、「それでも日本製がいい」と購入する養鶏家があるとか。「世界の養鶏家にうちの製品を」とトップメーカーの鼻息は荒い▼ブラジルの鶏卵生産量は約2千トンで世界7位(総務省統計局データ)だが、人口の多さに加え、一人当たりの消費量の延びを期待できる有望市場だ。日本製品の品質の良さは周知の事実、問題は安い国産メーカーがある中でどう売り込むかだ。南部幸男専務取締役が「卵が割れていたら困るなと、消費者がようやく気付いてきた所」と語るように、意識が未成熟な部分もある▼せっかくの日本企業の進出とあって、編集部でも「生卵が気軽に食べられたらなあ」と話題になった。醤油でシンプルに頂く「卵かけご飯」は、新鮮な卵ならでは。当地ではセアザや輸送業者がストを起こした時などは特に、鮮度が不安定になる▼卵の生食は世界でも珍しい食習慣と聞くが、日本料理としては一般的な使い方だ。日本に生食が根付いたのは、行き届いた衛生管理の賜物だろう。それを支える一端がナベルのようなメーカーだ▼日本の国土の22・5倍もある当地では搬送に時間もかかり、鮮度を保つのは容易ではない。しかし日本食文化の一環として生食の利点を宣伝し、生食可能な商品を売り出せば、日本食が盛んなブラジルで生卵文化が受け入れられる可能性はある。それも、消費者の意識をどれだけ変えられるか次第。多様な日本食文化を押し広げる日本メーカーの躍進に期待したい。(阿)