6月30日にサンパウロ州内陸部のボツカツで持たれた結婚式は、簡素な中にも愛の溢れるものだった。
短めの白いドレスを着て、花束を手に入場したミシェレ・アウヴェス・デ・オリヴェイラさんを迎えたのは、5年前から交際しているジョアン・マルコス・ダ・シウヴァさん。結婚式は病院の中で執り行われ、医師や看護婦も列席している事、花婿が車椅子でしか動けない状態であった事を除けば、幸福かつ感動に満ちた一時だった。
だが、列席していた人達は皆、花婿の余命が短い事を知っていた。否、知っていたからこそ、花婿の最後の夢を叶えるためにこの日の式を計画したのだ。
ジョアンさんが腹部の癌を患っている事が判ったのは交際を始めて1年後の事だった。ジョアンさんは、最初の手術が終わった直後に結婚を申込んだが、癌が進行し、入退院を繰り返す中、結婚式も順延されてきた。
だが、6月の再診時、再手術を勧められたジョアンさんが手術を断った後に、「手術を受けなければ余命はいくばくもない」と宣告されて状況が変わった。
ジョアンさんから「死ぬ前にたった一つ叶えたい事がある。それは君と結婚する事」と言われたミシェレさんは、病院のスタッフに病院の中で結婚式を挙げる事が可能かと聞いてみた。
それを聞いた看護婦達は、二人の望みを叶えてあげようと2日間走り回り、ケーキやサウガジーニョを準備し、牧師も呼んできた。
3週間にわたる入院中も片時もジョアンさんの傍を離れようとせず、母親以上に必死に看護するミシェレさんの姿は、相手の苦しむ姿を見たくない、見せたくないと言った理由で別れてしまう患者を見慣れてきた看護婦達にも大きな感動を与えていたが、涙をこらえながら歌い、キスを交わす二人の姿は、更に大きな感動を呼び起こした。
事情を知らずにジョアンさんの病室を訪れた病院職員は、式の間の40分間、カメラマンに早変わり。涙をこらえながら撮影した写真は、抑えきれない感動の言葉と共にソーシャルネットワークにも掲載された。
ジョアンさんは式から3日後に他界したが、ミシェレさんは最後まで彼に寄り添った事を後悔していない。
否、むしろ、「彼は最後の日まで信仰を持ち続け、夢が叶う事を疑わなかった」「病気の人と付き合っているなんて可哀想という人もいたけど、彼は私に、世界で一番幸せな女性だと思わせてくれた」「思い出すのは美しい思い出と幸福な日々だけ」「全快した彼が一緒にいて皆と喜んでいるのを見たかったけれど、きっとあの式は痛みの最中の慰めだったのだと思う」と証している。(24日付G1サイトより)