ホーム | 日系社会ニュース | USP=日系合格者が過去最低=頂点の90年は18%も=以後減少し今年9・5%に=純血者は今も高学歴志向か

USP=日系合格者が過去最低=頂点の90年は18%も=以後減少し今年9・5%に=純血者は今も高学歴志向か

 サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)の顧問・宮尾進さんの調査によれば、今年度のサンパウロ州立総合大学(USP)の日系人合格者の割合が、過去最低の9・5%となったことが判明した。1978年の同調査開始時は11%で、以後は徐々に上昇し、1990年の18%をピークに減少していた。

 宮尾さんはこの減少傾向に関し、当初は「改正入管法によるデカセギ増加や、ブラジルのハイパーインフレの影響もあって、サンパウロ大学入試業務担当財団(Fuvest)の一次試験で落ちた者の多くが、日本での就労生活を選んだのでは」との予測を立てていた。
 しかし、デカセギブームが過ぎた後も減少傾向は止まらず、今はこの考え方に否定的な見方をしている。むしろ「日系人が良くも悪くもブラジル社会に溶け込んだ結果ではないか」と考えているという。「四、五世と世代を重ねるなかで社会的な地位が安定しつつある。そのためかつて強くあった、社会上昇のために子弟に高学歴を求める意識が薄まっているのでは」と話した。
 日本移民が教育に力を入れたのは、二つの理由があると推測する。一つは「諸外国に比べ日本移民のブラジル進出は後進で、社会に出るためのコネもなく、高学歴によって地位を向上確立させる必要があった」というもの。
 二つ目は東洋全体の儒教的影響を挙げた。70年代から中国、韓国系の成績優秀者も少数ながら存在し、「絶対数は少ないが進学率は今も高いまま。やはり儒教の影響が強いのでは」との印象を語っている。
 そんな高学歴志向もあって、「70年代から学力優秀な日系人が頭角を現した。予備校や学習塾の新聞広告に掲載された成績上位者の顔写真には、日系人がズラリと並んだ。その理由を尋ねて、ブラジルのメディアもここに来た」と当時を振り返る。
 一昨年からは純血・混血にも注目し、「名前を見た限りだが7対3で純血が多いようだ。昔は日系人を一まとめに数えていたが、この区別によって純血家庭では未だに高学歴志向が強く残っていると思われる」と語り、家庭の混血化による変化にも触れた。
 減少傾向にあるとはいえ、サンパウロ州人口約4千万人の内、日系人が概ね100万人(2・5%)を占めているとすると9・5%でも十分に高い数字だ。今後に関して宮尾さんは「減少傾向は今後も続くはず。将来的には3%など人口比率と同様の割合まで落ちることになるのだろう。その時には『ブラジル社会に完全に溶け込んだ』と言えるのでは」と見通しを語った。