イスラエルによるパレスチナ暫定自治区のガザ地区侵攻に関してブラジル外務省が23日に行なった批判に対し、イスラエル側が強い遺憾の意を表明した。ブラジル側はイスラエルからの大使召還や南米開発市場(メルコスル)会議での議題にガザ侵攻を持ち出すことなどを検討している。25日付伯字紙が報じている。
ガザ地区がパレスチナ自治政府の統治下に置かれたのは1993年だが、パレスチナ人とイスラエル人の宗教も絡んだ対立はもっと以前から続いている。2007年にイスラム教原理主義政党ハマスが同地区を占拠した際には、パレスチナ解放機構主流派のファタハがクーデターと批判し、イスラエルも経済制裁を強化。2008~09年にはイスラエルの同地区侵攻を伴う「ガザ紛争」も起こっている。
イスラエル人とパレスチナ人の関係は14年6月、別のパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区で起きたイスラエル人の少年3人の誘拐殺害事件で再び揺れ始めた。7月にはユダヤ系過激派が報復としてパレスチナ人の少年を殺害したため、ガザ地区で抗議行動が拡大し、ロケット弾攻撃も開始。イスラエル側も地対空ミサイルを発射して対応したが、7月8日から始まったガザ地区への軍事侵攻では24日までに700人以上とも900人以上ともいわれる死者が出ている。死者の大半はパレスチナ人で、24日には同地の国連経営の学校が襲撃され、15人の生徒が亡くなった。ガザ侵攻では老人や子供の死者も目立っている。
ブラジル外務省は23日、在イスラエル大使を呼び戻して質問後、イスラエル側とパレスチナ側との武力の不均衡さを問題とし、ガザ侵攻を批判する声明を出した。
これに対し、イスラエル政府は24日に声明を出し、ブラジル外務省の発言に遺憾の意を表明。「我が国の自衛権を理解していない」「こんな声明では問題解決にならない」と批判し、ブラジルは「外交的な小人(アノン)」と評した。
これに対し、ルイス・アルベルト・フィゲイレード外相は、「ブラジルは全ての国連加盟国と外交を持っている11カ国しかない貴重な国の中の一つで、常に国際平和を望んでいる。もし、我が国を『外交的な小人』だというなら、的外れにもほどがある」と反論した。同相は「ハマス側がイスラエルに対してロケット弾を2千発も放ったことは批判されて然るべき」だが、「イスラエルの行動は自衛権行使の域を超えている」としている。
イスラエル側の反応はジウマ大統領を驚かせたが、イスラエル側の攻撃的な口調を無視し、争いを避ける意向だ。だが、外務省関係者は、イスラエルのテル・アヴィヴにあるブラジル大使館は当分のあいだ空になると予想している。
ガザ問題に関しては、29日にベネズエラのカラカスで開かれる南米共同市場(メルコスル)の会議でも取り扱うことが検討されており、何らかの声明が発表されることになりそうだ。