最近パラグァイは色んな面で国際的に注目されているが、それを端的にいみじくも表現するのが、正にブラジルのゼツリオ・バルガス財団に属するコンサルタントで、作家のワグナー・E・ウェーバー氏のパラグァイ情勢を論評するその著書の原題(筆者仮訳)ではないかと思い、敢えて本稿の題名に使わせて貰った。
同氏の著述に依ると、現在は内陸国の人口ほぼ600万人のパラグァイは、過去62年間に二回の大戦争(1964〜1970、対亜、伯、宇三国同盟戦争)とチャコ戦争(1932〜1935対ボリビア戦争)で極端に国力は疲弊したが、近来30年間には全ラテンアメリカ諸国中で一番の高経済成長を続けでいる国であると云うものである。
特に三国同盟戦争では、約20万人の老若男女を残し100万人が戦病死した悲劇的な殲滅戦で、その62年後のチャコ戦争でも3万人の壮年や青年の戦死傷者を出している。
盛大な見本市と畜産展
このパラグァイで今では恒例となっている全国最大の『第33回畜産、工業、農業、貿易、サービス業国際見本市兼第69回全国畜産展示会・Expo Feria 2014』が、アスンシォン市近郊のARP・パラグァイ牧畜協会の敷地内で同ARP及びUIP・パラグァイ工業協会の共催で、7月12日から27日までの16日間に嘗てない盛況振りを以って開催された。
なお、今回はFundación Círculo de Montevideo・モンテビデオ・サークル財団(仮訳)の第XX(22)回通常総会が、丁度この17と18の両日アスンシォン市で招集された関係もあって、同会議に参加したフェリーぺ・ゴンサーレス(西=スペイン)、フェルナンド・ヘンリケ・カルドーゾ(伯)、ホセ・マリア・サンギネティ(宇=ウルグアイ)、リカルド・ラゴス(智=チリ)、レオネル・フェルナンデス(土=ドミニカ)等々の元大統領が出席した。
さらにOIE・国際獣疫事務所長のバナード・ヴァラット博士、メキシコの大財閥で長者番付世界一のカルロス・スリム氏の他、多くの国際政財界の錚々たる有名人物が同見本市を訪れ、これまでにない盛り上がりを見せ、18日の夜はUIPの社交ホールで近来頓に品質が良くなった国産牛肉を主食材にした宴会『ステーキの夜』が催された。
三国同盟に遡る南米関係
しかし今度はなんと云っても一番話題を賑わしたのは、この18日に多くの財界要人を帯同しパラグァイを公式訪問したウルグァイのホセ・ムヒカ大統領である。
同大統領の今回の訪パ目的は昨年10月のカルテス大統領のウルグァイ公式訪問の答礼訪問だったが、同時に今回初めて「Expo Feria 2014・国際見本市」に出展設営された「ウルグァイ・パビリォン」開館のテープカットの他、複数のパラグァイとの二国間経済互恵協定調印の為であった。
ここでちょっと歴史を簡単に振り返って見ると、元々パラグァイに親近感を抱くウルグァイが、例の三国同盟戦争が始まる迄はブラジルとの領土境界問題で紛糾していたところ、巴国(パラグァイ)の二代目大統領(後のフランシスコ・ソラノ・ロペス元帥)はアルゼンチン経由ウルグァイへの援軍を派遣する為に亜国領土通過の許可を要請したが、これをアルゼンチン(連邦)は拒否。
一方、ブラジル帝国(ドン・ペドロ二世皇帝)はイタマラチ外交よろしく、同じくアルゼンチンとも仲が良くなかったウルグァイを懐柔し、対パラグァイ三国同盟戦争の密約を成就するに至った。この裏には七洋を君臨した大英帝国の策謀があったものと言われている。
このようにして三国同盟戦争で戦勝国の一員となったウルグァイではある。だが、本心はパラグァイとの戦争を望まなかった同国は、現在の「メルコスル」でパラグァイ同様小国の悲哀を感じ、近隣の大国らしからぬブラジルとアルゼンチン両国の間にあって、常に不公正な扱いを受けている事はパラグァイと共に「同病相哀れむ」の仲だと云う感傷である。
この辺の事情からウルグァイとパラグァイは「Alianza del Pacífico・太平洋同盟」に近寄る傾向を各自示しているのは頷ける。(つづく)
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