英国の企業がサンパウロ州内陸部のカンピーナス市にデング熱対策用の蚊の生産工場を建設、29日に落成式を行った。
デング熱は蚊が媒体となって感染する病気なのに、なぜ蚊の大量生産なのかと思う人も多いかもしれないが、英国のオキシテック社が生産している蚊は、遺伝子組み換えを行ったオスで、ボウフラから成虫になる段階で死ぬようにプログラミングされている。
自然界に放たれた遺伝子組み換えの蚊はオスのため、人を刺さない。また、この蚊と交尾した野生のメスが卵を産み、ボウフラが発生しても成虫になる前に死んでしまうため、蚊の数がどんどん減っていく事になる。
遺伝子組み換えの蚊の効果は既にバイア州ジャコビナで実験済みで、オスの蚊を開放した後はデング熱を媒介する蚊の数が90%減った。蚊の数を減らすための遺伝子の組み換え技術の使用は国家バイオ保全技術委員会(CTNBio)も承認済みで、国家サニタリー監督庁(ANVISA)の承認が出次第、商業目的の販売が可能となる。
今年のカンピーナス地方はデング熱の大流行で死者も出ており、サンパウロ市のデング熱患者多発地域では、カンピーナス地方で感染した後にサンパウロ市に来た患者を刺した蚊が感染を拡大させたとも言われている。
カンピーナス市に建設された工場は現在、1週間に50万匹のオスの蚊を生産する事が出来、生産能力を週200万匹まで高める事も可能だ。同社では、人口5万の市の場合は1年目に200~500万レアル、2年目以降は100万レアルの投資を行う事でデング熱の脅威から開放されるとしており、カンピーナス市とピラシカーバ市では既にこの蚊の利用を検討しているという。
ただ、昨年、遺伝子組み換え種の蚊のテストを行ったバイア州ジャコビナでは今年、デング熱が流行しており、一部の機関から、実験が完結したといえるのか否かという点とその効果を疑問視する声が上がっている。
オキシテック社はこれらの疑問に対し、ジャコビナでの実験では同市の面積の5%にあたる地域にしか蚊を開放していないとした上で、CTNBioに提出した書類は900ページに及ぶもので、実験は一応完結していると答えている。(30日付エスタード紙などより)