日本で再びデカセギ需要が高まっている。アベノミスクによる景気回復に伴い、工場や建設現場などで働く単純労働者が不足してきたようだ。しかし、日本人の新卒大学生らは就職難に直面したままだとか。というのは、「大学を卒業してまで単純労働なんて」と考え、こうした職業を避けるからだ。日本の就職で大卒という〃印籠〃は、もう切り札ではない▼一方、このような単純労働が一部の日系ブラジル人には「高収入」と喜ばれる。90年代に大量のデカセギを送り出したバストス市などは、今も「一家に一人はデカセギに行っている」と言われる。帰伯後、起業してもうまくいかず、トンボ返りで訪日してしまう。日本の産業発展の背景には、こうしたブラジルの町々の青壮年層の空洞化があるのだと思い、複雑な気持ちになった。日本で貯めた資金すら、彼らの故郷には有効に還元されていないのかと▼22日のニュースサイトBBCブラジルには、デカセギ体験を生かして語学を学び、専門性を高め、職歴アップを図った日系人が紹介されていた。日本企業で成功するには文化理解が必須と考え、語学を猛勉強した例が多い。高い言葉の壁さえ突き破れば、日本ではまだ少ない「日ポ両語バイリンガル人材」が逆に大きな売りになる▼労働力の確保を狙い、安倍晋三首相も移民政策を掲げている。日本で生まれ育った多くの在日二世をバイリンガル人材に育成するような支援があってもいい。デカセギブーム開始から来年で30年。日伯間に築かれた膨大なデカセギ経験の蓄積を、これからの両国のために活かせないか。そんな取り組みを安倍総理にお願いしたい。(阿)