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特別寄稿=連邦議員選挙=競争率14人に1人の難関=突破する日系候補は誰か=コロニアはどんな人を応援?=駒形 秀雄

 サッカー(コッパ)も終わり、話題の中心は選挙に移っています。街を歩けば候補者の立て看板やパンフレットが目に付くようになり、来週からはテレビなどでの無料政見(宣伝?)放送が始まります。10月5日の選挙は大統領や州知事ばかりでなく、私達に身近な連邦議員や州議会議員をも選ぶことになるのですが、その顔ぶれなどがよく知られていません。今回はサンパウロ地区連邦議員候補について日系を中心に話題を御紹介致したいと思います。

厳しい選挙を楽しく演出

 ブラジルの連邦議員は513席、全員が改選となります。ブラジルの有権者は約1・4億人、サンパウロ州はその内22%の3200万人です。この票を争う候補者(サンパウロ州連邦議員候補)は今回大きく増え、その当選確率は13、4人に1人となっています。
 ブラジルの選挙制度は日本と異なり、「政党比例制」の形をとっています。即ち、各候補者は必ずどこかの党に所属しているので、各党が獲得した票数によりまず各党への議席が配分されます。各党内では今度は得票数の多い候補者から順に当選者を決めるという仕組みです。各党ではその人物などと合わせ、多くの得票を得られそうな人を候補者に選び、また、候補者の数が増えればその党の得票総数も増えるので、勢い候補者の数が増えるという事になります。
 前回(2010年)の選挙ではチリリカ(雑草の名)というコメデアンが立候補し、一人で10人分にも相当する135万票を獲得しました。この大量得票のお陰で同党の下位得票候補は自身の得票数が少ないにも拘わらず、何人もが当選できました。
 所で当選証書を授与する段階になって、この人(TIRIRICA)はどうも文字がよく読めないのでないか?という疑問が提起されました。「議員は文字が読めなくていけない」という規則があるので、彼の当選無効が囁かれました。チリリカの得票が無効になれば、お陰で当選した人の票も少なくなり、議員就任がなくなります。結局、彼は文字が分かるという審査結果となり、話題も一件落着となりました。「だからブラジルは良い国だ」と言った人が居ました。

ビン・ラーデンが立候補?

 さあて、こんな風ですから、ブラジルの選挙には日本の常識では考えられないような事があります。その例の一つに選挙の公式登録名を挙げてみましょう。米国の大統領と同じオバマと名乗った人が二人います。そのうちの一人のOBAMA  BRASILと名乗った人は容姿が似ているのでこう名乗ったようです。また、「ビン・ラーデン」の名を登録した人も居ますが、これなど何を考えているのかと思わされます。他に変わった名前では A VOZ  DA  RUAS(街の声)・MEU QUERIDO (私のいとしい人)・ MALUCO  BELEZA(気違い?)というのもあります。「ブラジルはふざけて居る」と怒りますか? 「選挙まで楽しむ良い国民だ」と受け入れますか? 

当選するには何が必要か?

 ブラジルの選挙にはこのように気楽にトライという一面もあり日系候補も負けては居ません。「我こそは日系代表としてこのブラジルを良くしてやろう」と意気込んだのか、或いは「あんな男が当選して代議士先生になれのるなら、ひょっとして俺も当選できるかも、一発狙ってみるか」と思ったのか知れません。別表のように、なんと30人以上の人が立候補しているのです。もし日系人が全員当選したとすると、サンパウロの定員70人の内、4割は日系人となります。「ジャポネース ガランチード」ですね。
 冗談は別にして、日系候補者のリストを見ると皆立派な真面目そうな人ばかりです。年齢は40~50歳台の働き盛り、学歴も高学歴で医師、弁護士、会計士などがおり、その地域社会で認められている人達なのです。この中から一人でも多くの人に当選して貰いたいものですね。
 しかし当選して「先生」と呼ばれる道筋はそう易しいものでは無いでしょう。今まで実績として、日系候補者の当選者は2~4人程度しか居ませんし、カバンと言われる資金手当ても容易ではないでしょう。僥倖狙いの泡沫候補は別にして当選目指して活動するには数百万レアル(億円単位)が相場と言われており、個人でこれだけの準備をするのは大変なことです。
 ブラジルの団体などでは「政治家とはこちらに寄付をしてくれる人」と思っている人が多いが「私達を代表して国会に意見を届けてくれる人には献金してでも応援したい」、という日本式の考えを持てないのか?と言っていた候補者が居ました。貴方の周りの人達はどちらでしょうか?
 ところで「サンパウロ州で連邦議員に当選するには何票くらい取らないとならないのか」です。この数は、選出方法が前述のとおりで各個人というより所属政党により変わりますので、きっちりした数字は申せませんが、まあ、8万票から11万票くらい取らないと安心できないと言われています。
 文協の講堂に一杯入って1100人ですから、「俺は日系団体で顔が売れている。地元で俺は顔役さ」程度の昔の感覚ではダメなのです。「日系人だから日系候補に入れて」だけでは間にあわないのです。分かりやすく示すなら、新サッカー場が満杯で7万人程度ですから、パガエンブーのスタジアムでしたらその2杯分から3杯分くらいの得票が無ければなりません。田舎の役員選挙と違って容易でないことが分かりますね。
 
日系候補はどんな人?

 それではそのようなルールを十分理解して運動している有力日系候補者にはどのような方々が居られるのでしょう。一部御紹介です。
【大田KEIKO】57歳、現職。8歳の実子を犯罪で失い「こういう世の中を変えよう」と地域社会と共に立ち上がり、その勢いで前回2010年に21万票強を獲得して連議に当選した。2年前には夫のまさたか氏も市会議員に選ばれ、その地盤が強固なことを誇示しています。今回もこれらの票が支えてくれれば当選確実でしょう。所属党―PSBの党首はカンポス大統領候補。
【安部JUNJI】モジ市長として2期、8年間高い支持を受けた。現連邦議員。親の代から農業関係に従事してきたので、同じ様な経歴をもつ日系人から共感を得ている。前回選挙ではモジ地方中心に11万票を得ているが、今回は更にサンパウロ地区、地方都市の支持を拡大、この票の上積みを計っている。所属党はカサビ前サンパウロ市長が党首のPSD。サンパウロ事務所のジョージ宮原氏が支持拡大に活躍中。
【飯星 しんじ WALTER】53歳 人当たりが良く魅力的、戦後移住の父との関連で日系人に良く知られている。また、仕事の関係から美容業界からの支持があり、団体役員、世話役などを歴任している。前回選挙ではSUPLENTE(補欠)となり、連邦議員の経験もある。所属は安部氏と同じPSD。
【WILLIAM WOO】46歳。健康そうで押し出しも立派。市警(POLICIA CIVIL)に18年間勤めた後に市議、連邦議員となった。現在はCOMUNICADOR BRASILEIRO(ブラジル人の代弁者)で活躍している。父は台湾系、母は日系人。所属党はPPS。
【羽藤ALEX】31歳、独身。医師と言うだけで人気が出そう。父ジョージ羽藤(州議員)にならって政界進出を決めた。父ジョージ、兄GEORGE(市議)の支持層をどこまで自分の票にできるか、で当落が決まりそう。所属は有力与党のPMDB。
他にも優秀な方、有望な方々が沢山居られるますが、紙面の都合でこの辺で終わります。
 今回の選挙は今までと違い、インターネットなどのIT情報技術の活用が運動の成果を大きく左右すると言われています。ITは従来の手法に比べ少ない資金投下で効果は大きい。若くて新しい技法利用に優れた日系候補はこれらを十分に活用していると思われるが、それに日系社会の「血の通った応援」があれば鬼に金棒、ブラジルの「ジャポネース・ガランチード」が本当にその価値を発揮出来るかもしれません。(ご意見などはこちらへどうぞ=komagata@uol.com.br)

 

日系連邦議員候補者(サンパウロ州)一覧  敬称略

                                                                                                                                S.Paulo, 08/08/2014

登録名

政党

出身地

年齢

説明

JUNJI ABE

PSD

MOGI DAS CRUZES

73

現職、モジ市長

OTA

PSB

OLIMPIA

57

現職、治安

WALTER IHOSHI

PSD

S. PAULO

53

議員SUPLENTE

WILLIAM WOO

PV

S. PAULO

46

前職、治安

ALEX HATO

PMDB

S. PAULO

31

羽藤一族、医師

AKIKO AKIYAMA

PSOL

ASSAI-PR.

72

秋山

CHRISTIAN NAKABASHI

PSDC

VOTUPORANGA

39

中橋

DILZA MURAMOTO

PEN

ITAPORÃ

58

村本城間みえ子

DR.NAKANO

PSB

PIRACICABA

50

中野

DR.RICARDO YOSHIO

PRB

PRESIT. PRUDENTE

61

吉雄

DR.SATO

PMDB

LONDRINA-PR.

53

佐藤、医師

EDSON HATO

PTC

S. PAULO

41

 

EDSON T. SAKAUE

PRB

PEREIRA BARRETO

61

坂上堤 技師

ELMER JAPONES

PSC

S. PAULO

46

 

ITO

PSL

DOURADOS-MS.

53

伊藤まさし

JORGE KINA

PV

SANTO ANDRE

49

喜納、建築士

MARCIO NAKASHIMA

PMDB

GUARULHOS

36

中島、会計士

MARIO SHIBATA

PSB

PIRAQUERA-AÇU

53

柴田 企業主

MAIO YAMASHITA

PP

RIBEIRÃO PIRES

64

山下 会計士

OSMAR TOYAMA

PRP

MOGI DAS CRUZES

47

PAULINHO S

SASAKI

PTB

IBIÚNA

45

佐々木けんじ

PEDRO MORI

PSB

PRESIT.BERNARDES

55

森 弁護士

PEDRO TUZIMO LEITE

PTB

SOROCABA

54

技師

PRF.CARLOS SHINODA

PSD

CACHOEIRA DAS MACAU-RJ .

58

篠田すすむ

RUBENS NAKANO

SDD

S. PAULO

66

中野しょうじ

SAITO SAN

PHS

TAUBATÉ

59

斉藤つねお

SAKAI

PP

BAURÚ

49

坂井 市議

SEIJI KIKUTI

PSC

ATIBAIA

41

菊池せいじ

TAMAZATO

PTC

TAUBATÉ

40

玉里

TANIA SHIBATA

PV

S. PAULO

48

柴田、弁護士

THABATA YAMAUCHI

PRV

S. PAULO

40

山内かおる

TONINHO MURAKI

PTB

SUZANO

56

村木よしあき