「年末になって家に帰ったら、子供達に世界的に有名なシェフのアレックス・アタラ氏が教えてくれたモケッカを作って驚かせてやるの」と嬉しそうに語るのは、麻薬密売で2008年に捕まる前も、子供達に食事を作ってやるのが好きだったというファビアナ・ドス・サントスさん(34)だ。
ファビアナさんは、7日に行われた卒業式で卒業証書とバラの造花を受け取った35人の女性受刑囚の一人だ。この卒業式は、サンパウロ市北部の女性刑務所で開催された調理講座の受講者に対するもので、1回4時間で20回の授業という同講座は今回で3回目。20回の授業の内、1回はアタラ氏が担当する。
この講座は、シェフのダヴィド・ヘルツ氏が創設した非政府団体(NGO)のガストロモチヴァの主催で、アタラ氏が開設したアター研究所が支援、サンパウロ州政府とサンパウロ地方裁判所がスポンサーとなって開催されている。
この講座を開催する事で「人々が変わっていくのを目の当たりに出来るのは最大の喜び」というのはアタラ氏。ヘルツ氏も「(刑務所に入った女性達が)調理をきっかけに社会的な変化を遂げてくれればと考えて始めた事」と説明する。
講座が始まる前は卵焼きすら出来なかったというデイジー・カリーナさん(24)はパラグアイ人で、麻薬の売買で16年の刑を言い渡された。故郷からは1200キロ離れたサンパウロにいるのでなければ、卒業証書とバラの造花を威張って見せるところだというデイジーさんは現在、刑務所内の台所で働いている。卒業式では、21人の外国人と刑務所職員1人を含む35人の受講者の写真も受け取った。
チャペルでの卒業式に招かれたジェラルド・アウキミン知事は、「毎月講座を開いて、年間350人の卒業生を送り出そう」とまで発言。かつての受講者で現在はガストロモチヴァの台所で働くルシマラ・アジェノルさん(37)は、12年間麻薬の売買を取り仕切り、自分が何様かであるような錯覚に陥っていたが、現在の職場では「働いているのが本当に楽しい」と語りかけた。
この調理講座はジャイメ・ガルシア・ドス・サントス判事が発案。同判事から声をかけられたガストロモチヴァやアタラ氏らの協力を得て、2011年に始まった。(8日付エスタード紙ならびにフォーリャ紙より)