サンパウロ総合大学(USP)の健康と持続可能性研究所の調査員達が、サンパウロ州では2030年までの16年間に大気汚染が原因での死者が25万6千人に及ぶ可能性があり、25%以上にあたる5万9千人はサンパウロ市で死亡するとの推論を発表したと9日付エスタード紙が報じた。
今回の調査は2011年のデータを基に行われたもので、大気汚染による死者はエイズの6倍、交通事故や乳癌による死者の約3倍との報告は、サンパウロ州やブラジルの大気汚染の実態に対する極めて厳しい警告となった。
最近はサンパウロ州の大気の状態の調査結果の報道が少ないが、電光掲示板などで大気の状態は良好という表示を見ても、安心出来ない。というのは、ブラジルでは大気1立方メートル中の埃や煙などの汚染物質が150マイクログラム(1マイクログラムは1グラムの100万分の1)までが良好と評価されるが、この数字は世界保健機関(WHO)が定める許容範囲(1立方メートル当たり50マイクログラム)の3倍に当たるからだ。
大気の汚れによる影響を受けやすいのは、喘息や気管支炎などの呼吸器疾患を持つ人や循環器系疾患、心臓病などを抱える人、肺炎や気管支炎を起こしている5歳以下の子供、高齢者などだ。
大気汚染によって16年間に起きる死者は、肺癌その他の癌に起因するものが3万件、喘息その他の気管支系疾患に起因するものが9万3千件などと推測されている。
USP医学部のエヴァンジェリナ・ヴォルミタギ教授は、連邦政府や州政府などの公的機関が大気の状況改善のためにより厳格な政策を採用する事の必要性を改めて強調している。
具体案としては、エネルギー源の変更、自転車や電気バスなどの大気汚染を起こしにくい交通手段の導入、市内を走行する車両数削減、ディーゼル車のマフラーへのフィルター装着の義務化などが挙げられている。同教授はサンパウロ市でのバスや自転車の専用レーン増設は汚染状況改善に繋がると評価しており、ハダジ市長も自転車専用レーン導入による大気の状況改善効果を算定するよう指示を出した。
今回の調査ではサンパウロ市の死者は5万9千人と試算されたが、サンパウロ州内でのサンパウロ市の大気汚染状況は悪い方から数えて11番目。そういう意味で、エヴァンジェリナ教授が待望する全国環境審議会(Conama)による大気の状況の判断基準改定は、クバトン、オザスコ、アラサツーバ、グアルーリョス、パウリーナなどの大気汚染都市にも不可欠な政策と言えそうだ。