ホーム | 特集 | 【安倍首相来伯特集】「中南米との新たな夜明け」=〃地球儀を俯瞰する外交〃=重要パートナーに=日伯外交樹立120周年に向け
1日午前、安倍首相を首都ブラジリアの大統領府に迎え入れ、入口で固い握手を交わすジウマ大統領(Foto: Roberto Stuckert)
1日午前、安倍首相を首都ブラジリアの大統領府に迎え入れ、入口で固い握手を交わすジウマ大統領(Foto: Roberto Stuckert)

【安倍首相来伯特集】「中南米との新たな夜明け」=〃地球儀を俯瞰する外交〃=重要パートナーに=日伯外交樹立120周年に向け

 安倍晋三首相夫妻は中南米5カ国歴訪の最終訪問国ブラジルに1日到着し、まず首都ブラジリアでジウマ大統領と首脳会談と、「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議」等に参加し、2日にはサンパウロ市を訪れて日系人向けの講演や懇談会を含めた過密な日程をこなして帰路についた。首相はこの5カ国に関して「国際社会で影響力を高めている中南米は、私の〃地球儀を俯瞰する外交〃において欠かすことのできない」と述べ、「日本と中南米との歴史的な絆を、更なる高みへと発展させていく、今回の訪問は日本と中南米との戦略的なパートナーシップの新たな夜明けとなった」と今回の訪問を位置付けた。


ジウマ大統領の歓迎の言葉=1日のブラジル外務省昼食会で

 安倍総理大臣、政府、企業関係者の皆様のわが国へのご訪問は、両国の友好、相互理解を反映するものであり、多様な分野での相互協力関係を強化したいとの希望を表すものと理解しています。
 私は2008年に日本を訪れましたが、その際ブラジル日本移民100周年記念行事に、ブラジル政府代表として参加したことを思い出します。天皇皇后両陛下に拝謁も賜りました。
 2015年の、日本とブラジルの外交関係樹立120周年を記念し、安倍総理と私は、その外交関係をよりグローバル戦略パートナーのレベルにまで引き上げることで同意しました。このイニシアティブにより、日本とブラジルの政治・経済上の連携が高いレベルで強化されることでしょう。

1日午前、大統領府で安倍首相夫妻を受け入れ、首相の横で昭恵首相夫人と握手するジウマ大統領(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

1日午前、大統領府で安倍首相夫妻を受け入れ、首相の横で昭恵首相夫人と握手するジウマ大統領(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

 2013年には両国間の貿易取引金額が150億ドルに達し、今後は、いまだ一次製品に集中しているブラジルからの輸出を中心に、両国間の貿易のさらなる拡大と多様化をめざすことを再確認しました。
 昨年はサンタカタリーナ州産豚肉の門戸を再び開いていただいたことに感謝し、ブラジルの熱処理済み牛肉の輸入規制を停止して頂くことへの希望を表明しました。
 また従来からの農業、工業、製鉄業、製紙、セルロース、電化製品、最近では自動車、造船の各業界での日本企業の存在の重要性においても同意しました。
 日本からわが国には、私の任期中には137億ドルで、2014年前期だけで20億ドルが投資されました。Inovar-Auto政策(自動車の技術革新と生産強化奨励計画)の実施では、日本の自動車メーカーのわが国への関心の高まりが伺われました。ここ数年でトヨタ、日産、ホンダ、ブリジストンなどの大手各社の投資が発表され、今後は新たな分野でも日本企業の存在感は高まっています。

9つの共同声明に調印

 本日調印した共同声明にも一項目として含まれていますが、海洋資源開発のための造船協力事業は、この分野の二国間関係をさらに強めるものです。アトランチコ・スル造船(EAS)、エスタレイロ・エンセアーダ・ド・パラグアスー造船、エコビックス・エンジェビックス社への日本企業の資本参加は、非常に喜ばしいことです。今後は技術者同士の交流、従業員の職業訓練にも力をいれ、関係を補強したいと思います。

1日、ブラジリアで「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議」に臨んだ安倍首相。左端が社会経済開発銀行(BNDES)のルシアーノ・コウチーニョ総裁。中央がロブソン・ブラガ・デ・アンドラデ全国工業連盟(CNI)会長(Foto: José Paulo Lacerda/ CNI)

1日、ブラジリアで「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議」に臨んだ安倍首相。左端が社会経済開発銀行(BNDES)のルシアーノ・コウチーニョ総裁。中央がロブソン・ブラガ・デ・アンドラデ全国工業連盟(CNI)会長(Foto: José Paulo Lacerda/ CNI)

 ペトロブラスが子会社を通じて行う造船事業に関する融資契約、これに対する独立行政法人日本貿易保険(NEXI)の保険引受に係る合意文書も、ペトロブラス、同子会社、みずほ銀行、NEXIの間で締結されました。また、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との間では、次世代のエネルギー源メタンハイドレートの採掘に関する研究の相互協力への合意がなされました。
 その他、イタキ港、サンフランシスコ・ド・スル港、南北鉄道、カラジャス鉄道の拡大に伴うインフラ、ロジスティック事業関連の入札への日本企業のご参加も歓迎いたします。
 学術、自然科学、イノベーション分野においても、両国関係は重要なものです。生物工学、農業研究、生物医学、海洋学分野における協力関係の継続に加え、宇宙、原子力、自然災害対策の各分野でもパートナーシップの可能性に期待します。奨学金プログラム「国境なき科学」を通じた日本へのブラジル人留学生増員も決定しました。

国際舞台でも共同歩調へ

 国際協力銀行(JBIC)と伯社会経済開発銀行(BNDES)の提携関係は50年以上に及びますが、今回新たに日本の中堅・中小企業のブラジル投資促進への協力を目的とした覚書が締結されました。産業オートメーション、総合生産システム、ITなどハイテク事業での生産性向上に寄与するものと考えます。

両国の主要な企業家が一堂に会した同会議では、石油・ガスといったエネルギー開発やインフラ整備、人材交流の促進などの意見交換がなされた。伯側からは同会のエリエゼール・バチスタ氏名誉会長、日本側から経団連の榊原定征会長やトヨタ自動車の内山田竹志会長らが出席した(Foto: José Paulo Lacerda/ CNI)

両国の主要な企業家が一堂に会した同会議では、石油・ガスといったエネルギー開発やインフラ整備、人材交流の促進などの意見交換がなされた。伯側からは同会のエリエゼール・バチスタ氏名誉会長、日本側から経団連の榊原定征会長やトヨタ自動車の内山田竹志会長らが出席した(Foto: José Paulo Lacerda/ CNI)

 また、安倍首相と私は国際場裏での協力関係も確認しました。オーストラリアで開かれる次回のG20会議では、世界経済の成長促進における20カ国の重要な役割を強調すること、G4を通じた国連安保理改革の早期実現の重要性において合意しました。また、同時に中東や東アジアで頻発する地域紛争の解決における国連の重要性を確認し、ブラジルは世界平和へのイニシアティブを取ることを表明します。
 日本とブラジルの関係が他とは一線を画しているのは、強い人的絆があるからに他なりません。ブラジルには150万人の日本国外で最大の日系社会があり、日本には世界で3番目の規模の20万人のブラジル人コミュニティがあります。両国の査証の緩和政策は、二国間の人の往来をより活発にするものと思います。

査証緩和でリオ五輪に期待

 また、先般のワールドカップでは多くの日本人がブラジルに来られたことを、私個人、ブラジル人全員が光栄に思います。リオ五輪でも同じく多くの方に来ていただけること、2020年の東京五輪の成功、多くのブラジル人の訪問に期待します。
 我々ブラジル人は日本人に対して特別な尊敬の感情を抱いており、私たちは深い人間的な繋がりで結ばれています。
 日本移民は自分たちの労働、価値、文化を通じて、ブラジルを少し日本に似た国にし、同時に彼ら自身は完全にブラジル人となりました。私達の関係はもはや友情にとどまらず、親類のような関係です。日系人は企業家、軍人、教師、芸術家、公務員、医者、科学者、農家、そして労働者として、現在あるブラジルの建設に力を貸し、今でも未来のブラジルの建設に尽力し続けています。同じように、日本で生きる大切なブラジル人コミュニティが、明日の日本の建設に寄与できるよう保証しなくてはなりません。
 安倍首相のご来伯は、二国間関係の新たな段階の始まりを意味するものです。日伯戦略的グローバルパートナーシップの構築は、数十年にわたって成果を出している協力関係にさらなる発展と活性化の余地があるという認識の現れです。日本とブラジルが変化を遂げ、今後もより良く変化し続けていくであろうということは、本日の会談でも話をした通りです。
 日伯外交樹立120周年の2015年を祝福するに当たっては、政治対話の頻度を増やし、ブラジルにおける日本の投資を増やして日本でのブラジル経済の存在感を高め、文化・学術の面でもより緊密な交流が行われることを期待します。セレモニーの開催を重ねるよりも、実際にこれらのイニシアティブをとることが、ブラジルと日本の関係の活性化と重要性の強化に繋がるものと考えます。