国際交流基金サンパウロ日本文化センター(深沢陽所長)が「国立劇場おきなわ」と共催し、20日にサンパウロ市ガゼッタ劇場で男性舞踊家11人を招いて公演『琉球の新風(みーかじ)』を行なった。会場は660人の来場で満席に。大半は沖縄県系とみられ、約2時間の故郷の本格芸能に酔いしれた。
国立劇場おきなわは、2004年に組踊や琉球舞踊、音楽など芸能の継承を目的に創立。琉球王国時代に中国の使者をもてなすために生まれた「組踊」は、ユネスコ世界無形文化財リストにも登録されている。
祝宴の座開きでおなじみの「かぎやで風」で幕開けすると、荘厳な雰囲気の組踊「忠臣身替の巻」や「部の舞」、軽快な踊りが特徴的な「谷茶前(たんちゃめー)」「加那よー天川(かなよーあまかわ)」、民衆の生活を表現した「島唄」など全11種目が2時間に渡って行なわれ、客席からは盛んに歓声や口笛が飛んだ。
酒好きな二人の従者が主人の不在を見計らって盗み酒をする喜劇「棒縛」は全てうちなー口で行なわれたが、会場からは終始大爆笑が起きていた。
呉屋ハツエさん(61)は、「沖縄の言葉は少ししかわからないけど、とっても良かった」と笑顔を見せた。
県系人の親族がいるという前田睦子(75、二世)、国吉康子さん(73、同)姉妹は最前列で迫力の公演を楽しみ、「うちなー口は知らないけど、勘で大体のストーリーはわかった。踊りも歌もすごく良い」と満足げに語った。
最後は鳩間島の美しさを歌った民謡「鳩間節」にあわせ、踊り手が舞台から降りて会場を練り歩いた。観客は更に沸きたち、手拍子したりカメラを手に踊り手を囲んだりと楽しんだ。
公演後、構成演出を行なった2代目芸術監督の嘉数道彦さん(34、那覇市)は、「沖縄でも、うちなー口はほとんど通じないのが現状。ブラジルでの反応は沖縄以上にすばらしかった」と2度目の来伯の感想を述べた。
また、公演に先立ち県人会で行なった交流を振り返り、「地元にいる人間にとっては、南米の皆さんの故郷への強い思いが刺激になる。温かい沖縄の気持ちを大切にしているのが伝わり、芸能以上に精神的に学ぶことが多い」と話した。
一行は、22日にリオで公演を行い、その後沖縄移民入植60周年を迎えたボリビアでも初公演を行なった。