ラテンアメリカ地域(以下ラ米地域)において女性の権利が着実な進展を遂げてから20年が過ぎた今、ブラジルやチリ、アルゼンチンなどで女性大統領が選ばれたように、同地域は政府の要職に就く女性が最も多い地域の一つとなった。しかし最新の調査によれば、女性が活躍する場は多くの分野で失割れてきているという。
世界銀行の推定によれば1990年以降、同地域では労働市場に参入した女性が33%増え、男女平等意識の高まりという意味では世界でも模範的な地域とされる。にもかかわらず、国連のラテンアメリカ・カリブ諸国経済委員会(以下Cepal)が女性の権利向上キャンペーンを行うのはなぜか。
実は、ラテンアメリカ地域では2013年末、5人の女性大統領が選ばれ、政界や法曹界でも女性の進出が著しかったにもかかわらず、カリブ地域5カ国、ラテンアメリカ13カ国において女性閣僚の人数が前政権よりも減っている。
同委員会がキャンペーンを行う背景の一つに、男女間の就業率の格差が激しいという事実がある。男性の就業率が80%であるのに対し、女性は50%。個人所得を得る術を何も持たない男性は12%であるのに対し、女性は33%(グアテマラでは42%、ボリビアでは39%、ベネズエラでは34%)となっている。
また、男女間の労働条件の格差も問題だ。ラテンアメリカの多くの民間企業では、女性の給与が男性より低い。子供の学校の送り迎えなどもあって、会社側が女性は男性より就業時間が短い、産休中の有給を支払いたくないなどと考えている場合は少なくない。
女性の権利を訴えるキャンペーンの矛先は政府なのか、女性達の夫なのか、恋人なのか。Cepalのアリシア・バルセナ代表は、「人々に、この不平等に気付いてもらわなくてはいけない。女性の権利を訴える先は、彼女達の夫でもなく恋人でもなく、政府です」と語る。
不法な児童就労と同時に、女性への不平等な労働条件の是正も大きな課題だ。ラテンアメリカ経済の約半分を非公式経済(公式経済部門と異なり、課税されず、いかなる政府機関の関与も受けず、国民総生産の統計にも表れない経済部門のこと)が占めていることを挙げ、同代表は「この地下経済の実態をきちんと監視するため、多くの人々を公式経済セクターに移す必要がある」と続ける。
しかし、女性の権利向上への取り組みをより世に広めるためには、影響力のある人物の協力が必要だ。黒人女性のスーパースターのビヨンセがかつて、米国の女性の権利向上運動で大きな役割を果たしたように、キャンペーンに推進力を与えるために、大きな訴求力を持ったセレブリティの無償による協力が望まれるところだ。(9月1日エスタード紙より)