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 日本館を設計した建築家・堀口捨己は明治後期に生まれ、欧州の新しい建築運動に心を惹かれ、従来の様式建築を否定する「分離派建築会」を結成し、伝統文化とモダニズム建築の統合を図ったことで知られる。日本館設計当時は明治大学教授、59歳で、まさに円熟期の作品だ。生涯に約50の建築物を残したが、すでに九つは現存しない。中島工務店の中島紀于社長が言うとおり、日本館は「堀口先生の代表作の一つ」だ。日本館自体にはモダニズムの欠片もないが、ブラジルで、しかもニーマイヤー設計の公園という立地自体が〃モダン〃だったのかも。
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 名誉サンパウロ市民の称号を受けた二宮正人さんは呼び寄せ移民で、USP卒業後、東京大学で博士号を取得、母校法学部教授となり、セントロに事務所を構えていたが15年前から現在のスマレ区に移転。進出企業の顧問弁護士として35年以上活躍。その活躍は法曹界にとどまらず、NHKのルーラ大統領インタビューでは通訳も。講演者が10分もしゃべった内容を、メモも取らずにポ語で再現する記憶力には、誰もがビックリ。
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 米グレンデールに従軍慰安婦像が設置された件に関し、原告の日系団体が連邦高裁に上訴した。日韓の歴史認識の違いなどという理由で許容できる話ではないし、また先祖の母国の国際的地位を脅かす事態に子孫も憤ったのに違いない。最近、従軍慰安婦問題をこじらせたといわれる朝日新聞が過去の報道を撤回する連載を始め、巷をにぎわしている。早期解決が望まれるのには違いないが、こうした障害が日系人・日本人としての自覚を逆に深める契機になっている気も。