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チリリッカの本職は政治家か、ピエロか

 罰則のある義務投票という制度が生む〃鬼っ子〃、批判票が誰に入るかを予想するのは実に難しい。国民性を見抜く必要があるだからだ。かつてどの候補にも入れたくない場合、動物に投票して「人間にふさわしい候補がいない」と抗議していた▼手書き投票の時代、1959年のサンパウロ市議選挙では動物園のサイ「カカレッソ」に10万票が集まって〃当選〃し、無効となった。88年にはリオ動物園のチンパンジー「チアン」に市長候補として40万票も集まった▼96年にボタン式の機械投票が始まって架空候補に投票できなくなり、実在だが「ありえない候補」に抗議票が集まるようになった。02年には政見放送で「私の名はエネアス」しか言わない泡沫下議候補に史上最多の157万票、4年前にはコメディアンのチリリッカが135万票で下議に当選した。実にユーモラスな国民性だ▼チリリッカに投票した有権者は、本物の「パリャッソ」(ピエロ)を議会に送り込むことで、政界の茶番劇振りを批判する気持ちを込めていた。ところがチリリッカは当選した途端、〃イジメ〃とも取れるような厳しい文盲調査をされて震え上がり、それ以来、政治家を茶化す発言を一切しなくなった▼ピエロのはずの彼は、現実には最も議会出席率が高い〃真面目な政治家〃となり、「下界のパリャッソですら政界では真面目な部類に入る」と揶揄された。議会でクソ真面目な彼が今回の政見放送では、批判票を集めるべくピエロに戻っている。「政治家は選挙の時だけ真面目ぶって、当選したら議会でパリャッソになるが、チリリッカは逆」との声も。この逆転現象自体がパリャサーダ(滑稽)だ。(深)