大衆紙アゴーラの記者が、サンパウロ市内で営まれている青空市(フェイラ)13カ所を訪れ、その模様をレポートしている。サンパウロで営まれているフェイラはこの8月で100年の歴史を数え、880カ所のフェイラで営業している業者(フェイランテ)は1万2073人に上る。
13のフェイラで取材した記者がすぐ気づいたのは、大半の屋台は家族経営であること。中には4代にわたって経営されている屋台もあった。
そのうちの一軒は、市南部ヴィラ・マリアーナ区のアンブロジーナと呼ばれる市場で、親類も含めた家族7人でフルーツを売るロニスヴァリオ・カシアーノ・サントスさん(34)一家の屋台だ。「家族でお互いに笑いながら働くのは楽しいよ。みんなここで一緒に育ったからね。信頼関係もバッチリさ」と語る。
「信頼関係が一番大事です。特に小さな露店では」―。飴、菓子類、ビスケットなどを夫、父親と共に売るイヴェッチ・ヤマダ・シルバさん(51)は語る。「家族でやると、給料を払わなくていいから安くつくしね」
8月に公表された市のデータによると、フェイラで働く若者は少ない。19歳~25歳の若者は、フェイランテ全体の3%にとどまる。
サンパウロ市フェイランテ組合のジョゼ・トーレス・ゴンサウベス代表は、「青空市は家族経営の商売でありつづけている。同じテントの下で親戚が働いていない屋台は珍しい」と説明する。2年前のフェイランテ登録数は1万だったが、現在は2千以上増え、拡大の一途を辿っているため、若者の青空市への関心の薄さはさほど大きな影響を与えていないようだ。
また、フェイラは家族で経営されているのみでなく、新しい家族を作り出してもいる。フェイラ内で男女が知り合い、結婚して新しい青空市を持つケースもある。
14歳から家族のフェイラで働いていたエロニウデ・オオシロさん(52)は、同じくフェイランテの息子だったマリオ・オオシロさん(60)と出会い、今年で結婚29年になる。夫婦であり共同経営者でもある2人は、「お互いに両親の屋台で働くのを辞め、一緒に野菜を売り始めたの」と語る。オオシロさん夫婦はマリオさんの弟セルジオさんと3人で、共に汗を流す日々だ。
ジョアン・ペレイラ・バチスタさん(75)の屋台は、市内のフェイランテとしては最も長い歴史を持つ一つだという。「市が青空市での営業登録をする法律を定めた直後の1934年に、父が登録したんだ」と語る。
ジョアンさんの屋台では娘のジャネッチさん(50)、息子のジュリオさん(41)、孫のルーカス・ペレイラ(17)さんも働いている。
1957年からフェイラで働いているジョアンさんにとって、親族と共に働くことは喜びだ。「父から私、息子達から孫まで4代続いているのは嬉しいね。売上も、給料もお金がみんな家庭に入るから」と冗談もこぼす。父と共に働いて30年になるジャネッチさんは、「時には喧嘩もするけど、家族いつも一緒で楽しいわ」と笑顔で語った。(8日付アゴーラ紙より)