世界的な経済信託の格付会社、ムーディーズ(米国)が9日、ブラジルの格付を下げることを示唆し、連邦政府に波紋が広がっている。10日付伯字紙が報じている。
スタンダード&プアーズ、フィッチ・レイティングスと並ぶ世界3大格付会社のムーディーズが、9日に発表した報告書の中で、ブラジル中央政府や中央銀行の債務履行能力に対する評価を「安定的」から「弱含み」に変えた。同社がブラジルの先行きに関する見方を変えるのは1年間で2度目だ。ブラジルの評価は13年10月に「強含み」から「安定的」に変更された。
ムーディーズは先行き評価を見直した理由として、国内総生産(GDP)が2四半期続けてマイナス成長となり、実質的なリセッション(景気後退)に入ったこと、ここ4年間のGDPは低成長であること、投資額が落ちていること、投資家たちの信頼感が落ちていることなどをあげている。投資家の信頼感は2008~09年の世界的経済危機のとき並みに失墜しており、その背景には政府の経済干渉の強さがあげられている。
同社の格付は大統領選挙まではとりあえず「Baa2」のままだが、次回の評価次第で格付が下がる可能性がある。格着けが同社の基準の「Baa3」に落ちた場合は、「債務の支払いの良い国」の中にかろうじて止まるが「中程度のリスク」をもつグループの最下位となる。もうひとランク落ちて「Ba1」になれば、「投機的要素があり」「債務踏み倒しの可能性のある国」に仲間入りしてしまう。
実際に「Baa3」に落ちた場合は、ブラジルの公社や銀行、企業などの債権の信用が下がり、返済金利引き上げを要求されるなど、財政面に影響が及ぶと言われている。
他の2社の格付を見ると、昨年6月に評価見直しを行い、ブラジルは「安定的」より「弱含み」と発言していたスタンダード&プアーズは、今年3月にムーディーズの「Baa3」に相当する「BBB-」に評価を下げた。フィッチの評価はムーディーズの「Baa2」相当の「BBB」で、今年7月に評価維持も決めたが、こちらも状況次第で変動が起こりうる。
大統領選挙まであと1カ月を切った段階でムーディーズがこのような報告をしたと聞いたジウマ大統領は、具体的な言及を避け、「ブラジルはあらゆる面で発展できる状態にあり、マクロ経済学的に見ても不安定な状態ではない」と言うに止めた。
一方、財務省は、ムーディーズの報告に対して不満をあらわにし、「旱魃やW杯があった影響は既に克服され、下半期の経済が回復することを考慮に入れていない」として反論している。
ムーディーズによると、同社がブラジルの現状に対する見方を変えるには15年1月から始まる次政権が基礎的財政収支をGDPの2~3%に上げることが必要だ。同社では次政権の経済政策が実際に成果をあげるには最低でも1~2年を要するとの見方を示している。