ブラジル本門佛立宗が今週末、サンパウロ市で平和パレードを行う。同門宗務総長の木村日覚上人が集団的自衛権に反対の声を上げたことがきっかけだ。国民の間だけではなく宗教界でも懸念が高まっており、立正佼成会はじめ、キリスト教諸団体や、100以上の団体が加盟する全日本仏教会なども大同団結し、意義を唱えている。集団的自衛権の是非が日本を揺さぶり、求心力を生んでいる▼しかし日本というテリトリーの外にいると、反対派の主張には違和感を抱くことも多い。宗教団体の主張の趣旨は、「憲法の恣意的な解釈変更は危険。現憲法が空文化すれば、国民が戦争に巻き込まれる」というもの。主張は最もだが、周辺諸国が「領土はわが国のもの」と挑戦状をたたきつけている今日の状況下にあって、「ではどうすべきか」という代替案はない▼「軍国主義化」や「平和主義の放棄」を案じているのは、おそらく日本と一部の近隣諸国だけで、国際社会は集団的自衛権の行使を歓迎している。日本が暴走し過去の惨禍を繰り返すような国ならば、国際社会は脅威とみなしたはずで、戦後50回以上も改憲したドイツはむしろ、国際社会のリーダーとして存在感を高めている▼「改憲」と聞くとただちに思考停止に陥ってしまうのは、69年前に全国民が抱え込んだ敗戦アレルギーの残滓のようなものだ。過剰にも見えるその反応には、どうも違和感が残る▼宗教界に期待したいのは、国境を越えた平和希求運動の活発化。利害関係のない土俵で各国の融和を図り、国境を突き崩してほしい。〃葬式仏教〃と揶揄されてきた仏教団体がどこまで影響力を持ちうるか、その見せ所ではないか。(阿)