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亜国=米判事は厳しいが慎重姿勢=対外債務支払い停止問題=法廷侮辱罪の適用避け静観

クリスティーナ・フェルナンデス大統領(Foto: Presid麩cia da Argentina 04/09/2014)

クリスティーナ・フェルナンデス大統領(Foto: Presid麩cia da Argentina 04/09/2014)

 【らぷらた報知9日付け=「記者席」欄】クリスティーナ・フェルナンデス大統領がブエノスアイレス株式取引所(Bolsa de Comercio)創立160周年記念祝典の席上を借りて発表した、禿げ鷹グループ(BUITRES)に対するデフォルト(対外債務支払い停止)債務返済新戦略は、ニューヨーク州連邦裁判所判事トマス・グリエーサに対する宣戦布告と見てよい。だが、これに対するグリエーサ判事と禿げ鷹グループ側弁護士団の反響はどうであろうか?

 勿論不愉快に思ったであろうが、グリエーサ判事自身の態度は意外に慎重なものであった。
 グリエーサ判事はクリスティーナの戦略プロジェクトを評して「米国連邦裁判所と控訴裁判所の判決に違反するもので、従って、また違法である以上法律化されるべきものではない」と述べると共に、「クリスティーナのプロジェクト実現を援助する個人乃至団体も処罰の対象となる」と付け加えた。
 つまりクリスティーナの構想するプロジェクトは非合法ということで、これに関して執るアルゼンチンの行動は法によって保護されないとの厳しいものになる。
 このような場合、不敬罪乃至法廷侮辱罪(スペイン語でDESACATO)が適用されるのが常だ。だが、なぜか、グリエーサ判事はその適用を控え、これに対し禿げ鷹グループの弁護士二人は、「アルゼンチンに対し、先ず法廷侮辱罪を適用、そのあと処罰すべきである」と強硬に主張した。
 だが、グリエーサ判事は「時期尚早である」とのみ答え、その理由として、アルゼンチンと禿げ鷹グループとは交渉中であることを挙げた。(註=両者の交渉に就いてはグリエーサ判事は調停者としてダニエル・ポラックなる弁護士を推薦したが、アルゼンチン側は「ポラック弁護士は禿げ鷹グループ寄りである」との理由で交渉を打ち切った。従って、クリスティーナに言わせれば交渉は中絶している筈だが、グリエーサは交渉は継続中と見ているようである?)
 一方、アルゼンチン側弁護士は「クリスティーナが述べたプロジェクトは彼女個人の考えで、アルゼンチン国会で討議される事になっている。従って、今直ちに法廷侮辱罪を適用する事は、逆に交渉を中断する事になる」としてグリエーサ判事の慎重姿勢を評価している。
 グリエーサ判事は「クリスティーナがそのようなプロジェクトを持っていたとすれば、何故、事前に相談してくれなかったか」と歎いている。
 会合は8月21日に行われたが、グリエーサ判事の慎重姿勢は禿げ鷹グループ側弁護士に不満を、アルゼンチン側弁護士に安堵感を与えたようである。
 記者の見るところではグリエーサ判事の慎重姿勢は予想されたことであった。アルゼンチンがBONISTA達に対するDEFAULT債務の期限前に間に合うようニューヨーク銀行に送った金を差し押さえるようにとの禿げ鷹グループの要請を容れず、封鎖措置だけに抑えたのは交渉を継続させる為で、今回の場合と同じく時期尚早と判断した事で、その深諜遠慮が見抜けないで判決不服従の宣戦布告を行ったのは、クリスティーナの政治的感覚の不在と外交戦略の欠如であった。
 彼女にしてみれば「PATRIA O BUITRES」の愛国心に訴え、反政府勢力を含めた協力の下にCANJEのやり直しの新しいプロジェクトを打ち出したのであろうが、最初はその愛国的スローガンに賛成する反政府議員もいたが、最近になって「待てよ」と反省する傾向が生まれて来た。最初、賛意を示していたコルドバのペロニスタのファン・シアレッティ、カルロス・カセリオ、ブランカ・ロッシなどの代議員達がそれであり、更に増える徴候が見られる。
 9月早々、新CANJEの法律化が国会で討議されることになるが、両院を通過するにしても政府与党の承認だけに終わるだろう。
 次に反対意見を聞くとしよう。

 新プロジェクトは高所から何も無い空間に向かって飛び降りるようなものである。国外との問題を重大化し、更に技術的な誤りを犯すだけある。(マルティンレドラード元中銀総裁にして更新戦線所属)
 政府プロジェクトは情勢を深刻化させるだけである。判決は尊重されねばならない。(フェデリコピネード・PRO所属)
 党派的問題ではなく国家的問題とあって反政府議員も賛成すべきである。でも国会は政府与党議員が多数を占めていることから法案が通過する事は明らかであるから、私は投票を棄権する(ビクトリア・ドンダ・政府与党所属)
 グリエーサ判事の判決を実行しないことによって、アルゼンチンは更に国際的孤立を深めるであろう(カバーロ元経済相)等々…。
 財界は表立って反対しないが、新プロジェクトの採用を憂慮していることは言う迄もない。政府だけがグリエーサ判事の判決を目して〃アルゼンチン国家の主権を蹂躙するもの〃と反駁している。
 さて、どうなるか?(高)