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「マスターシェフ」の裏側=TVには映らない過酷な現場

 9月2日より放送開始の人気番組「マスターシェフ」―。その舞台裏にエスタード紙が潜入取材し、18日付の紙面でその様子を報じた。
 9月12日、金曜日の午前10時45分、マスターシェフの収録現場は朝からスタッフが忙しく往来し、喧騒に包まれていた。
 スタジオには7列の調理台が設けられ、各々の調理台に挑戦者が2人ずつつく。計14人が一斉に料理に取り掛かる会場には、調味料、料理器具などの準備も万端整っている。
 パオラ、フォガッサ、ジャッキン、審査員がそろって司会のアナ・パウラに続いてスタジオ入りした。全員リラックスした様子。ハードな番組収録の1日が始まろうとしていた。
 17回にわたる番組は3週間前から放映され、人気が急上昇中だ。番組に出演する挑戦者はアマチュア料理人で、サンパウロ市パカエンブーのチャールズ・ミラー広場での一次選考には総勢300人もの挑戦者達がおのおの自慢の一皿を持って集まった。
 1次選考を通過したのは30名で、9月12日の録画まで残った挑戦者はたった7人。7人は午前11時13分にキッチンに入場し、各々が割り当てられた調理台の前に立った。
 「ブラジル料理界選りすぐりの審査員をそろえたよ」―。そう語るのは、制作会社の代表者ディエゴ・バレード氏。
 審査員にとっても初の本格TVデビューだったので、カメラ映えするかどうかも審査員選考の基準だった。
 審査員のシェフ達もディレクターのパトリシオ・ジアスや司会のアナ・パウラの助言のおかげでカメラの前でも自分を表現できると口を揃える。「アナはTVの経験が豊富だから、私たちを助けてくれているわ」とパオラは語る。
 番組前はお互いに知らなかった3人も、今では友情を築き、それぞれの役割を捉えつつある。
 パオラは手首のゴムを外し、髪を結わえた。バンダナをし、挑戦者たちに牛肉料理の説明をする。アルゼンチン人女性シェフの本領発揮の時だ。パオラの1時間に渡る料理説明のあと、ディレクターは3分の休憩を指示した。
 撮影中はずっと緊張感が張り詰めていた。米を試食する際、パオラは挑戦者に使った水の種類を尋ねた。答えは沸騰させた水道水だった。パオラは「ミネラルウォーターを使いなさいと何回も言ったでしょ!」と激怒した。フォガッサも何人もの挑戦者に対し、「肉を台無しにしやがって!」と辛らつな言葉を浴びせた。
 とはいえ、挑戦者と審査員はギスギスしてばかりいたわけではない。パオラはこの日、挑戦者の一人に「この料理、私の店でも作ってみたい!」と賞賛の言葉を投げかけた。取材日より前に収録された版では、フォガッサがアマパー州出身の挑戦者の地元でとれた材料で料理するエピソードを聞いて感動の余り、涙をこぼす場面もあった。
 順位が決まり、午後3時23分にパオラが「レストランではチャンスは一回きり、料理の味が全て。言い訳はきかない」と締めくくると、敗退した挑戦者はカメラの列の中、会場を退場した。
 最終回は12月に放送され、優勝者は15万レの賞金と車、パリの料理学校ル・コルドン・ブルー留学の奨学金を得る。「だけど、TVと実際のプロの現場は全然違う、現場はずっと張り詰めているから」とパオラは釘を刺す。
 一次選考で落ちた挑戦者数人が彼女のレストランで見習いを希望してきたが、「面接の日を指定したけど、彼らは現れなかったわ」という。(18日付エスタード紙より)