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ブラジル農業の行く先は?=「一貫した政策のない国」=技術や生産性は向上したが

 エスタード紙が18日に、国内総生産(GDP)の22・8%を占め、貿易収支の赤字転落を防ぐだけではなく、世界の食糧庫としても重要な役割を果たしているブラジルの農業に関するフォーラムを開催と22日付エスタード紙が報じた。
 「米国西部の開拓者達は英雄扱いされるが、南大河州の農家がマット・グロッソ州で生産活動を始めれば、環境破壊者との批判される」と言うのは、教育調査研究所(Insper)のクラウジオ・ハダジ所長だ。同所長は、農業の生産性はここ15年間で飛躍的に伸びたが、農業関連産業のイメージは国の実態を表していないと嘆く。
 「農牧業の進歩は目覚しいが、物流がネック」というのは、USP(サンパウロ総合大学)農科大学であるルイス・デ・ケイロス農科大学(Esalq)のジョゼ・ヴィセンテ・カイシェタ・フィーリョ教授だ。
 ルーラ政権時代の農務大臣のロベルト・ロドリゲス氏は、「行政担当者に明確なヴィジョンがない事が最大の問題」とダメ押しし、「畑にもっと関心を寄せるべきだ」と言う。農業関係者は農務省で法律や環境、労働者といった広範な対策を検討すべきとも提言した。
 ブラジル農牧調査研究所(Embrapa)のマウリシオ・ロペス所長は、国内の食糧供給を安定化させ、世界の食糧庫として不動の地位を確立した事は認めつつ、ブラジルの調査研究費はGDPの1・2~1・4%で、他国の半分と指摘した。
 物流は全産業界に関わる問題で、いくら収量や生産量が増えても鉄道や高速道路、港の整備が追いつかない。世界最大の大豆生産地であるマット・グロッソ州ソリゾからサントス港に輸送する間に無駄になる大豆は9~13%で、農業関連産業での世界平均の9%と比べると大差がある。
 13年のブラジルの農産物輸出額は世界21位で、カフェとオレンジジュース、サトウキビ、牛肉の生産量と輸出量は共に世界一。カフェの輸出額は32億ドルで、農産物輸出の7・1%を占める。サトウキビは全世界の約半分を生産し、エタノールの生産にも利用されるが、ルーラ政権がもてはやしたエタノールは岩塩層下の石油開発と共に忘れられた存在となり、製油所の閉鎖や倒産が増えている。世界2位の生産量を誇り輸出額3位の大豆は、ブラジルの農産物輸出の13・2%を占める。12年前は世界有数の輸入国だった棉の生産は世界6位で輸出額は3位。米の生産も世界9位だ。
 ブラジルの農産物や加工品の輸出先1位は中国で22・9%、2位の米国は7・1%、4位の日本は3・5%を占める。最近は、ウクライナ問題で経済制裁下にあるロシアが欧州などからの輸入を禁じたため、ブラジルからの輸出が増えている。