10月5日の投票日まで2週間――ブラジル日本文化協会(木多喜八郎会長)と外務省研修生OB会(外塚ジョルジ会長)が共催した「日系州議下議候補討論会」が20日午前、文協ビル小講堂で行われ、130人余りが聞きに訪れた。文協は以前「政治には関わらない」との方針だったが、木多会長になってから始まり、今回3回目。原田清総合コーディネーターは「日系社会は一般社会の一部として、ブラジルの発展に貢献してきた。農業や学術、芸術と同じように、日系人の特質である真面目さや勤勉さ、誠実さをもってさらに倫理ある政界にするため、日系人が政治への関心を高めるべき。意識ある投票を!」と開催意義を説明した。
午前8時半から州議候補8人が出席した。西本エリオ州議は「日本人の顔をしているだけで、一般州民から広く信用される。その利点と共に責任を強く感じる。しかし、日系社会の票だけでは当選が難しいのも現実」との心情を吐露した。
羽藤ジョージ州議は「今回が9回目の選挙。飲酒禁止令、騒音禁止法、二輪ヘルメット令など法案を実現し、貢献してきた。32年の政治家生活でフィッシャ・リンパなのは潔癖な証拠」と自己評価した。
関谷ロベルト候補も「ウィリアム・ウー下議、大田慶子下議の秘書として政治の現場を間近で見て来た。その経験を活かし、教育向上に力を尽くしたい」と語った。
元デカセギという異色の経歴を持つ谷パトリシア候補は「デカセギ資金をもって帰って起業した知り合いの大半は失敗した。零細企業支援に尽力したい」と語った。
中井貞夫候補は「百周年の時にサントス日系団体を代表して同日本語学校返還運動を成功させるために、市議となり、以来6年間政治家生活を送り、現在は議長を務めている。今後は州を舞台に貢献したい」と語った。
10時半からは直前に出席予定が変更になった大田下議以外の7人の候補が出席した。前回選挙で上議に立候補して落選したウー元下議(母が日本人)は、「任期中に60以上の法案を出し、三つは成立した。その大半は治安に関するもの。今の一番必要なこの問題を進めるために、再び連邦議会に戻りたい」と強い意欲を示した。
薬品の税率を下げることに尽力してきた飯星ワルテル候補は「先進国はゼロの所が多いのにブラジルは34%。もっともっと下げなくては」と訴えた。会場にはアルフレッド・コタイチ元上議も顔を見せた。
ペトロブラス増収賄問題に関する質問に対し、ナオミ・アメリア候補(PT)は「我が党はマスコミから差別を受けている。時々しか紙面をにぎわさないPSDBのメトロ汚職問題に比べて、マスコミはPTを批判しすぎ」と弁護した。
安部順二下議は「32党もあるのは多過ぎ。2年毎に市レベルと州連邦レベルの選挙があり、選挙運動が忙しすぎ。任期を5年に伸ばすなどの根本的な政治改革をする必要がある」と熱弁を振るった。
静岡県浜松市在住で国際弁護士をする石川エツオさん(二世、53)は「日系社会が昔のように一つになっていないことを強く感じた。でも文協が主導して、このような取り組みをしていることは評価したい。ただし、日本には日系人の10分の1が住んでいるが、彼らの話がほとんど出なかった。谷パトリシアさん、今日来なかった篠田カルロスさん(下議候補)など日本の状況を良くしる候補が出て来たことは歓迎したい」との感想を述べた。