21日午後、「あの軍警のビデオ見た?」と末の息子に問う長女の声が聞こえた。軍警が18日にサンパウロ市で露天商を射殺した録画だなと思い、子供達の考えを知りたくなった▼息子の声は聞こえなかったが、その後に「放せよ」などという声が聞こえてきたため、ビデオを見ているなと思って長女の傍に行った。丁度、軍警2人が1人の男性を組み敷き、周りの人達が「放せ」と抗議する中、銃と唐辛子スプレーを持って及び腰で周りを威嚇していた軍警が、そのスプレーに手を伸ばした男性を振り向きざまに撃つ様子が映し出された▼娘が見ていた映像は知り合いのフェイスブックで流れていたもの。その知人が警官の行為を擁護しているのを見た娘は、即座に「これが正しいと思う?」と問いかけた▼海賊版と呼ばれるビデオやDVDを売る行為は確かに間違いかも知れないが、周りの人が警官に暴行されたりするのを見たらいつも、「放してやれよ」と交渉役を務めていた無防備の男性に、いきなり発砲したのはやはり誤りだと思う▼大学の傍らのファヴェーラ住民が軍警らに不当な扱いを受ける様子も見た事がある長女は、「警察は正しい事しかしないと信じている人が多過ぎる」と疑問を呈す▼軍警は当初、銃を奪われそうになり誤って発砲と発表したが、映像公開後、取締りのあり方を再検討し、発砲した軍警の身柄も拘束した。死亡した露天商は15日に30歳になったばかりで、妻と子供と共に9月一杯で故郷のピアウイに帰り、公務員になる筈だった。心優しい男性が群集を恐れてびくついていた軍警の凶弾に倒れた姿に、考えさせられた午後の一時だった。(み)