【既報関連】23日にニューヨークの国連本部で開催された気候サミットで、2030年をめどに森林伐採をゼロにする「伐採ゼロ宣言」への調印が求められたが、ブラジルは調印しなかった。24日付伯字紙が報じている。
「伐採ゼロ宣言」は森林の伐採を2020年までに半減し、30年にはゼロにしようとするもので、その文書は欧米諸国を中心に準備された。この場合、伐採そのものを完全に止めるというものではなく、伐採を行なった場合はその分、植林を行なうなどして相殺することも意味している。
現在、世界で1年間に排出されている温室効果ガスは495億トンに上るが、そのうちの20%が森林伐採によって引き起こされている。
今回の調印に関しては、国連の潘基文事務総長も「森林伐採による温室効果ガスの排出量は米国が1年で排出するそれの量と等しい」と強く呼びかけており、すでに国連加盟193カ国中32カ国と39の多国籍企業のほか、非政府系団体や先住民グループなどが調印に応じている。また、欧州の国や金融機関は、国の発展のために工業化を進める意味で森林伐採に難色を示す発展途上国に対し、「森林を保存もしくは再生できた場合は最低でも10億米ドルの支援を行なう」ことも約束している。
このサミットでは、南半球最大の森林量を有するブラジルの立場が注目された。この日、ジウマ大統領は演説で、「ブラジルは2004年以来、森林伐採量を79%削減することに成功した」と語った。だが、「しかしながら、ブラジルは伐採ゼロの約束はできない」と答え、調印には応じなかった。
この件に関し、イザベラ・テイシェイラ環境相は、ブラジルは今回の「伐採ゼロ宣言」の準備には招かれておらず、連邦政府には8月末に同宣言の文面のコピーが送られて来て、何の修正もせずに承認するよう求められたと説明している。文書を準備したグループはブラジルも準備作業に加わることができるよう努力したが、叶わなかったという。
今回、ジウマ大統領が調印に応じなかったのは、ブラジルの森林法との兼ね合いがあるからだ。森林法では、農業や林業のために必要不可欠な伐採が認められている。ブラジルの森林伐採の主要要因の一つは、大豆栽培などのための農牧地拡大だ。今回の「伐採ゼロ宣言」では合法な伐採と不法な伐採の区別がなく、すべての伐採をゼロにすると理解すれば、国内法が認めている伐採も認められなくなってしまう。
また、環境団体、環境投資エージェンシーのアレッシャンドレ・ヴォン・ビスマルクさんのように「国に秘密で高額を払って伐採を促す連中が世界にいる限り、問題の解決にはならない」と国際的な不法伐採を問題視する声もある。
一方、ジウマ大統領の対抗馬である大統領候補で元環境相のマリーナ・シウヴァ氏は「国土の60%が森林の国が調印に応じないなんて」と今回の調印保留を嘆いた。