華道家元池坊ラテンアメリカ橘支部(田中凉華支部長)が同支部創立30周年を記念して19日から3日間、サンパウロ市のモンテ・レバノ・アトレチコ・クラブで『30周年記念華展』を開催した。初日の記念式典には約200人が参加し、節目を祝った。20日には派遣講師の清水新一さんが華道の実演を行い、来場者約80人に華道の奥深さを伝えた。田中支部長は「30年間続けてこられたのは皆様の温かい協力のおかげ。これからも普及に尽力したい」と感謝を語った。式典会場では同支部製作による豪華な30周年記念誌『池坊華道』の販売も行われた。
記念式典は午後7時半に「池坊の歌」の斉唱で始まり、田中支部長の挨拶の後、ブラジル日本文化福祉協会の木多喜八郎会長、在聖総領事館の中山雄亮副領事、清水派遣講師らが祝辞を述べた。
その後、伝承者育成に特別尽力した者に池坊本部が送る金の鋏と感謝状が、清水派遣講師から田中支部長、小松綾華、アンナ・マンテガッサ、加藤園華さんに贈られた。田中支部長からも同支部功労者8人に対して感謝状が贈られた。清水講師は「文化の異なる外国で華道の精神を伝えることは非常に難しいこと。同支部の活動には感謝の言葉しかありません」と語った。
式典の終わりには、生田流正派ブラジル箏の会北原民江代表とブラジル邦楽協会シェイン響盟会長が「春の海」を演奏し、厳かに式典を締めくくった。
翌日午後2時から行われた華道実演会では、清水講師が軽妙な語り口で池坊の歴史や精神、技術論を説き、立花、生花、自由花の3形式で計9杯を活けてみせた。
活花未経験だが、常々興味があったというセリア・サルーンさん(60)は「清水講師の説明はとてもわかりやすく、『わび』の概念や何も無い空間にも美しさを見出す池坊の考え方を理解することができた。実際に習ってみようと思う」と講演の感想を語った。
華展会場には、約70杯の作品が並べられ、来場者を楽しませた。水彩画教師の脇坂グラシエラさん(49、三世)は「表現を省略することで、鑑賞者に想像の余地を与える日本独特の芸術観が活きている。純粋な花の美しさを感じます」と語った。
記念式典で初お披露目となった30周年記念誌『池坊華道』は、全111貢カラーの大作。池坊華道の歴史や同支部の成り立ちが伯英両語で綴られているほか、約70ページにわたって作品写真が掲載されている。編集責任者を務めたアンナさんは「多くの人に読んで頂きたいです」と話した。購入希望者は同支部(電話=11・5584・7348)まで。