ペルーを訪ねる県連主催「ふるさと巡り」に参加した。現地日系社会との交流はもちろん、旅仲間との親睦もこのツアーの醍醐味だ。人との触れ合いは、いつでも人生の刺激になる▼移動の際に先頭を切って歩いていたHさん。ワンピースからすらりと伸びた足は、70代とは思えないくらい締まっている。小走りで階段を上がる姿は20代のようだ。「何か運動をされているんですか」と尋ねると、「昔バスガイドをしていたのよ」と張りのある声が返ってきた。鍛え上げた足腰は、若者顔負けだ▼ふるさと巡りの常連Kさんとは、コラム子と親子以上に年が離れているにも関わらず、まるで同年代の友人のように語り合うことが出来た。会話のテンポも動作もキビキビしていて、40以上もの年の差を忘れてしまう。「もう亡くなったけど、旦那に生活力がなかったから私が頑張るしかなかった。でも、あの時の苦労があったから今があると思っているの」。商売を営みながら子ども2人を育て上げ、「分相応の財を築けたことが幸せ」という。自分を卑下することも人を羨むこともせず、「幸せ」と言い切る円熟の境地に憧れた▼仲睦まじかったサンパウロ市在住のO夫妻。杖をついた86の妻を、90を超えた夫が労わる様子には琴瑟相和の感がある。飛行機への搭乗直前、「のどが渇いたわ」というO婦人の小さなつぶやきを聞き逃さず、彼女が止めるのを制して、夫は颯爽と水を買いに行った。その紳士な振る舞いを、周りの参加者から褒められ、少女のようにはにかむ彼女の笑顔には、ついつい、こちらも顔がほころんだ▼ふるさと巡りには十人十色のドラマがある。それがまた趣深い。(阿)