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大統領候補を音楽に喩えると?=有名歌手が推す候補者たち

 10月5日、ブラジルでは4年に1度の大統領選挙が行なわれる。今回の選挙は現職のジウマ大統領(労働者党・PT)が本命、アエシオ・ネーヴェス氏(民主社会党・PSDB)とマリーナ・シウヴァ氏(ブラジル社会党・PSB)が対抗する形で行なわれているが、「ブラジル音楽の有名人はどの候補を推しているか?」という記事が3日付フォーリャ紙に掲載されているので紹介してみよう。
 まずジウマ大統領を支持する音楽家で最も有名なのはシコ・ブアルキ。「ブラジルが生んだ最高の作詞家」とも呼ばれ、60年代に軍事政権と戦ったことでも知られる彼は、同時代に学生活動家だったジウマ氏に共感を抱いている。また、彼の妹のアナ・デ・オランダ氏はジウマ政権下で文化相をつとめていたことがあり、彼の元妻で国民的喜劇女優のマリエッタ・セヴェーロもジウマ氏支持だ。
 また、ベテラン・女性サンバ歌手のベッチ・カルヴァーリョにアルシオーネ、北東部出身の男性歌手、シコ・セーザルやオットーもジウマ氏支持だ。シコ・ブアルキも含めて共通して言えることは、いずれもその音楽性に強いサンバ色が感じられる歌い手であるということだ。これはサンバの持つ大衆性と、「貧困者の味方」のイメージの強いPTのそれとの相性ゆえかもしれない。
 一方、PTのライバル党、PSDBのアエシオ氏支持で最も有名なのはアメリカのカントリー・ミュージックをブラジル流に解釈した「セルタネージャ」の最大の歌手の1人、ゼゼ・ディ・カマルゴ。セルタネージャ界からは人気ドゥプロ、シタジーニョ&ショロローも支持を表明している。また、セルタネージャ以外では、MPBのベテラン男性歌手、ファギネル、レナト・テイシェイラ、ベト・ゲデスなどの名があがる。
 アエシオ氏支持の歌手に共通するのはいずれも年齢層の高い白人男性ということ。これは企業家や裕福な層に支持の強いPSDBのイメージに近い。
 一方、PTとPSDBの二党政党時代を終わらせるべく第3勢力として出馬のマリーナ氏には、60年代の若者の文化運動、「トロピカリズモ」を牽引したカエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルがいる。
 「トロピカリア」はビートルズなどのロックの影響を受けて出来た運動だったが、マリーナ氏の支持者にはロック系が目立ち、サンパウロが生んだ人気バンド、チタンスの元名物メンバー、アルナルド・アントゥネスや現在も大人気のカピタル・イニシアルのヴォーカル、ジーニョ・オウロ・プレットなどがいる。また、型にはまらない活動を展開する女性MPB歌手、アドリアーナ・カウカニョットもマリーナ氏支持だ。
 マリーナ氏は元々、軍政時代の学生などが中心になって作ったPTの出身で、ルーラ前大統領の時代には環境相もつとめたが、ジルベルト・ジルはその当時の文化相だ。マリーナ氏は与党となってからは汚職問題も抱えて保守化したPTを離党し、自身の理想とする政治を求めているが、そうした理想や刺激を求める精神性がロックと通じるところかもしれない。