過去に「リトル・ダンサー」「読む人」など、監督した作品が毎作アカデミー賞にノミネートされていることで知られるスティーヴン・ダルドリー監督の新作「トラッシュ―ゴミの山から来る希望」が9日、世界に先駆けてブラジルで公開された。
「トラッシュ」の舞台となるのは、リオのファヴェーラのゴミ集積所。そこに何か宝の山が落ちていないかと集まった少年3人組は、ある日、大金と見知らぬ男性の身分証明書の入ったかばんを見つける。少年たちはそれに興奮するも、そのかばんは、犯罪組織と汚職政治家の秘密が隠されているもので、少年たちは悪の組織から追われる身となってしまう。
この「トラッシュ」は、イギリスの作家、アンディ・マリガンが2010年に発表した同名小説が元になっている。これを読んだイギリス人映画プロデューサー、クリス・トゥクヴェ氏が感銘を受け、知人の監督数名に興味がないか尋ねてみたところ、名匠ダルドリーが手を上げた。
ダルドリーと言えば、世界的に大ヒットしたミュージカル「リトル・ダンサー」で注目され、映画では「めぐりあう時間たち」「読む人」で、主演のニコール・キッドマンとケイト・ウィンスレットが共にオスカーの主演女優賞を獲得したことでも非常に有名だ。
今作はそのダルドリーが、ゴミ集積所の舞台をイギリス以外の国にしようとしたことではじまった企画だったが、ダルドリーが、世界的に話題を呼んだブラジル映画「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス監督と個人的に親しかったことからリオが舞台となった。
この映画の最初の見所はブラジル、ハリウッドの双方から大物俳優が出演していることだ。ブラジル側からは、同国で人気を2分する大物俳優、ヴァギネル・モウラとセルトン・メロが出演。2人とも既にハリウッド・デビューも果たしている実力派だが、裏社会のボスの役を演じたセルトンは、「ブラジルでは誰も僕を悪役にはしない。これで消えかかっていた役者魂が蘇ったよ」とダルドリー監督に感謝の念を表明した。
またハリウッドからは、人気上昇中の若手女優のルーニー・マーラと大ベテランのマイケル・シーンが出演している。
だが、そうした大物出演者よりも話題となったのは、実質上の主役となる3人の少年たちだ。15~16歳の少年3人は、実際にリオの有名なファヴェーラの出身で演技経験がない。そんな少年たちの演技が、先行上映されたリオ国際映画祭では批評家たちから真っ先に賞賛された。少年たちは舞台裏ではやんちゃな存在で、共演したルーニーは「結婚してくれ、なんて言われたのよ」と語っている。
この映画はリオ国際映画祭で一般視聴者から好評を得たものの、批評家の多くは「シティ・オブ・ゴッド」との類似性も指摘した。果たして国際的にはどういう評価になるか。前作「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」まで、4作連続でオスカーにノミネートされているダルドリーだが、もし今作もノミネートされれば、ブラジル映画界にとっても大きな朗報となる。(9日付フォーリャ、エスタード両紙より)