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越知恭子学園長
越知恭子学園長

ベレン=「親日家育てる教育を」=日伯学園 越知学園長に聞く=年々高まる地元の評価=早期外国語教育を展開

 「学校で日本語を学んでも、使わないから話せない。生徒が日本語を話せるようになる学校を作りたかった」。生徒数約300人の規模を誇る「越知日伯学園」の学園長、越知恭子さん(67、広島)は同校の理念をそう語った。移住して40年余り、教育者としては30年のキャリアを持つ越知学園長に、地元社会に根付き、北伯の日本語教育の一端をも担うこの学校の理念、教育にかける思い、今後の課題などを聞いた。(田中詩穂記者)

幼稚園の子供たち。非日系が大半だ

幼稚園の子供たち。非日系が大半だ


 生徒の60%以上が非日系、幼稚園と小学校に加え、成人向けの日本語教室も開く。午前はブラジルの教育課程で授業を行い、午後は希望者にバレエ、音楽、空手、太鼓などを教える。約300人中の80人ほどがこの全日コースで学ぶ。「日本文化を生かした情操教育で、豊かな人間性を養いたい」という狙いだ。
 特色は早期外国語教育と子供の自立を目指すモンテッソーリ教育にある。国際社会で活躍できる人材育成のため、日本語、英語、スペイン語の多言語教育を展開する。「母語の文法体系は5歳までに身につく。第二言語習得における臨界期の11、12歳頃までにポ語以外の外国語を身につけると、他の教科の成績も伸びる効果がある」と考えている。
 最初は生徒集めに奔走し、宣伝には投資を惜しまなかった。その結果、「幼稚園は待ってもらっている」状態だ。口コミで評判が広がり、州立校からの転入者、最近ではデカセギ帰伯子弟の生徒も出てきた。
 28年間州立校に勤め、同学園は5年目の教師ルシア・バチスタさん(58)は「子供に愛情を持って接する。教育は本人の努力に加え、教師、親の3者の連携で成り立つ。ここではそれが実現されていると感じる」と充実感をにじませ、他の学校にはない情操教育を受ける子供には「努力をする姿勢が身についている」と感じるという。
 1971年に移住後、日本語教育界では1985年、同協会付属のアサイ学園日本語学校(翌年にべレン日本語学校モデル校に昇格)を設立、教師としての活動を本格化した。同校では後に教頭、校長も務めた。
 しかし日本語学者は減る一方だった。「もっと子供の視野を広げる教育をしたい」。そう考える中、99年に参加したJICA日本語教師応用コース研修が転機となった。「教師の待遇をよくして生徒を増やすだけでは不十分。日本語だけ教えてもダメ。これからは語学センター、幼稚園教育、バイリンガル教育だと気付いた」。
 99年にべレン日系協会運営のノーボムンド日伯学園を設立、07年に越知学園が誕生した。自らが信じる教育方針を貫く日々だ。
 医師、弁護士として活躍する3人の子供を育て上げ、2010年にはパラー州政府から教育部門の女性功労者賞「Mulher Padrao」を受けた。
 現在は小学校6年生までだが、来年には7、8年生まで、ゆくゆくは高等部も設置したいという。「日本語教育、文化の体験学習を通じて日本、日系人への理解を深めることで、親日家を育てる。それが両国親善に寄与する」。越知さんの挑戦は続く。