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日本とペルー食は兄弟?

 先日、サンパウロ市で開かれた「エキスポ・セビーチェ」で、ペルー人と同日系人のコンビがセビーチェ寿司を初披露した。魚のマリネ「セビーチェ」をシャリに乗せ、同国産香辛料で作った特製ソースをかけたもの。当地で「融合料理」というと、どこか「邪道」的に思われがちだが、この料理の思いもよらない味の調和には感激してしまった▼今年でペルーは日本移民開始から115年が経つ。創作料理の発案者、シェフのホルヘさんに「移住者がもたらした食生活は、ペルー料理に影響を与えたのか」と尋ねると、「当然」といわんばかりに頷き、「昔は魚を角切りにしてセビーチェを作っていたけど、マリネにするのに8時間もかかった。日本移民の伝えた方法で魚を切ると味が浸透しやすいので、今はそちらを採用する人が増えている」と滔々と語った▼ほかにも味を付けない生魚を寿司として食べる習慣が定着したほか、サーモン、海老、マグロなど、以前は食べられていなかった多種多様な魚介類が食卓に上るようになったとか。豊富な魚介類を多用するのは「ペルー食の伝統」と思っていたので、「セビーチェにイカや蛸を入れるのは、日本移民の影響」と聞いて驚いた▼世界が注目するペルー料理と、ユネスコ世界遺産となった日本食は、移民を通した深い繋がりがある。サンパウロ市でペルー料理を広める橘谷ロシオさんも、日本移民のペルー食への影響は「イタリア、フランスよりも大きい」と語る。インカ帝国と日本――悠久の歴史と文明を持つ両国家は、地球の両端にありながらも移民によって血を分けた兄弟のような一面がある。そう思うと、セビーチェ寿司にロマンすら感じてしまう。(阿)