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県連ふるさと巡り ペルー=115年経て受け継がれる日系魂=(9)=南米最古の日本人墓地へ=サンニコラスに眠る480人

サンニコラス墓地

サンニコラス墓地

 砂漠を通り抜け、4時間弱ほどでリマ市から約180キロ北にあるリマ県バランカ群スペ・プエルト区に到着した。漁業を主産業とする、人口約1万1千人の小さな沿岸の町だ。
 当時、移民が働いたさとうきび農園があった場所が一望できる高台に、1907年に作られた日本人が眠る「サンニコラス墓地」がある。同国に四つある日本人墓地の一つで、南米最古といわれ、バランカ日系人会の島袋ホルヘ会長によれば、この墓地には農園で働いた137人の契約移民、その後に亡くなった日本人480人が眠っている。
 日干し煉瓦の遺跡と岩山に囲まれ、手書きで死者の名を刻んだだけの白い墓標が幾つも立っているその光景は、殺風景で無機質で、どこかシュールレアリズムの絵のようだ。「慰霊塔」と書かれた上部に十字架があるのは、スペイン統治時代の名残だろう。
 島袋会長は「今、墓地を市の文化遺産にするための手続きを進めている所。観光地になればもっと町も繁栄する」と語る。同区で約20年前に発見されたカラル遺跡も、南米大陸最古の都市遺跡と言われ注目を集めている。墓地が文化遺産に認定されれば、新たな観光資源として区の活性化のみならず、日本移民史の見直しにも繋がるかもしれない。
 ファン・カルロス・アルブーカル・ペレイラ区長、同地出身のペルーを代表する画家ヴェナンシオ・シンキさん、35年間墓守を務めた右田ゲラルドさんら多くの関係者を招いて慰霊祭が執り行われ、それぞれ慰霊碑に焼香して先人の冥福を祈った。
 また、墓守の右田さん(81、二世)を顕彰し、墓の前の小道に右田さんの名が冠され、プラッカの除幕式も行われた。区長から感謝状を受け取った右田さんは、「とても感激しています。皆の協力でここまで来ることができた」と一仕事を終えた安堵感をにじませた。雑貨商を営んでいた右田さんの両親も、この墓地に眠っているという。
 慰霊祭後は、墓地近くのレストランで交流昼食会が開かれ、同会の会員らと歓談しながら郷土料理に舌鼓を打った。
 「夫が長野で働いたので12年間日本に住んだことがある」と、日本語で嬉しそうに声をかけてきた同地在住のイエスス・ボニートさん(60)。「娘が埼玉にいるので、来年また遊びに行く」と言う。
 夫の竹井俊行さん(75、長野)は「ペルーがいいわけじゃないが、日本にも未練はない」と言いながらも、「バランカには日本語を話す人がほとんどいないから、今日は皆と交流出来てよかった。来て良かった」としみじみ語った。そして「ペルーに来る機会があったらいつでも連絡して」と固く記者の手を握った。(つづく、児島阿佐美記者)